不眠症だけではない! 「眠り」に関するさまざまな病気
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眠りに関する病気はいくつあるのでしょう? Sleep Disordersには国際分類があり、2014年に発表された第三版では全部で69の病名が挙げられています。これらは7つの大きなカテゴリーに分類されています。(1)不眠症、(2)睡眠呼吸異常症群、(3)中枢性過眠症、(4)概日リズム睡眠覚醒異常症群、(5)睡眠随伴症群、(6)睡眠関連運動異常症群、(7)その他の睡眠関連疾患です。
なお、ちまたでは「睡眠障害」という言葉がよく使われているようですが、私は使いません。私はSleep Disordersを「睡眠関連疾患」と訳します。なぜかというと、「睡眠障害」では「睡眠が障害されている病気」を思い浮かべざるを得ないからです。
実際、皆さんは「睡眠障害」を英訳せよと言われた時に、どのような英語に直しますか? 素直に直せばSleep Disturbanceではないでしょうか? 確かにSleep Disturbanceを和訳すると睡眠障害でしょう。しかしSleep Disordersには過眠症やリズム異常もあります。
睡眠関連疾患には、交代勤務症や時差症もあります。この2つは、7つのカテゴリーのうちの(4)概日リズム睡眠覚醒異常症群です。いわゆる夢遊病は、正式名称では睡眠時遊行症で、これは(5)睡眠随伴症群に分類されます。(6)睡眠関連運動異常症群には、睡眠関連歯ぎしりの他、レストレスレッグズ症候群も含まれています。レストレスレッグズ症候群はむずむず足症候群とか下肢静止不能症候群とも呼ばれます。
(3)中枢性過眠症群の代表的な病気には、睡眠発作が代表的な症状のナルコレプシーがありますが、ほかには睡眠不足症候群という病気もあります。睡眠不足症候群では、正常な覚醒状態を維持するために必要な夜間の睡眠をとることができず眠気が生じます。患者さん自身は慢性の睡眠不足にあることを自覚していません。症状は攻撃性の高まり、注意や集中力・意欲の低下、疲労、落着きのなさ、協調不全、倦怠、食欲不振、胃腸障害などで、その結果さらに不安や抑うつが生じる場合もあります。睡眠を十分とれる週末や休暇時には、症状は軽快します。睡眠不足症候群の患者さんの眠りを調べても、寝入るまでの時間が短く、睡眠効率がいいこと以外には異常は見つかりません。24時間社会となった現代社会では、就床時刻が遅れ、睡眠時間が短くなり、その結果本症に陥る危険が高いといえます。
医師プロフィール
神山 潤 小児科
公益社団法人地域医療振興協会東京ベイ浦安市川医療センター CEO(管理者)
昭和56年東京医科歯科大学医学部卒、平成12年同大学大学院助教授(小児科)、平成16年東京北社会保険病院副院長、平成20年同院長、平成21年4月現職。公益社団法人地域医療振興協会理事、日本子ども健康科学会理事、日本小児神経学会評議員、日本睡眠学会理事。主な著書「睡眠の生理と臨床」(診断と治療社)、「子どもの睡眠」(芽ばえ社)、「夜ふかしの脳科学」(中公ラクレ新書)、「ねむりのはなし」(共訳、福音館)、「ねむり学入門」(新曜社)、睡眠関連病態(監修、中山書店)、小児科Wisdom Books子どもの睡眠外来(中山書店)「四快(よんかい)のすすめ」(編、新曜社)、「赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド」(監修、かんき出版)、「イラストでわかる! 赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド 」(監修、かんき出版)、「しらべよう!実行しよう!よいすいみん1-3」(監修、岩崎書店、こどもくらぶ編集)等。