企業の健康管理に革新を起こす〔2〕 社員の健康情報を一元管理するシステム「catchball」
記事
-「catchball」は個人情報と人事情報を、クラウド上で一元管理できるのですね。
そうです。これはアカウントを持っている関係者が、クラウド上でいつでもどこでも社員の健康情報を管理できるというものです。社員にとって、健康情報を正確に管理してもらっていることが、自身の安全につながります。
情報共有をどれだけできるかが、このようなサービスでは一番重要な点です。catchballは健康情報から勤怠管理等を全て一元管理できており、人事情報と個人情報は閲覧権により分けられています。このようにすることで、今までバラバラに管理されていた情報が必要な時にいつでも閲覧できるようになるのです。それによって、社員の健康情報把握にかかるスピード感が全く違います。
-クラウド型の健康管理システムのメリット・デメリットはなんでしょう?
メリットの1点目は、常に仕様を更新できるという点です。フェイスブックやITに慣れている我々にとって、使いにくいことは、非常に負担感を増しますので、ユーザビリティの追及のしやすさは大きなメリットになります。例えば、右下のボタンが少し使いにくいとすると、すぐに使いやすいところに直し、すぐに全ての方に反映されます。ソフトをダウンロードするタイプですと、全てインストールしなおさなければなりません。
2点目としては、非常に低コストです。普通に開発するより1/10~1/100のコストで済みます。そして、スピーディです。3点目としては、アカウントを発行してしまえば、新しい人もすぐに使えることです。ソフトのインストールは必要ないからです。この点においてもスピード感が全く違います。
一方で、デメリットとして取り上げられやすいのが、セキュリティ面です。いつでもどこでも見られるクラウド上に情報を入れておくということに、不安感を持たれる方がいます。
しかし、ソフトをインストールすることと、クラウド上に置いていることでセキュリティの差は今やほとんどありません。私のところはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を利用していますが、ここがハッキングされるのは、グーグルのGmailがハッキングされるのと同じレベルの大事件となります。大抵の情報漏えいは、内部の人間が情報をUSBに入れて持ち出すか、パスワードが「1」など簡単すぎる場合です。そのため、私たちは、英数字のパスワードを指定してしまっています。
-現在の利用状況と、今後の展望について教えてください。
複雑に絡み合った情報を一元管理できているのがcatchballの強みです。2015年9月でローンチから約1年半で、20社弱の企業に導入させていただいています。
さらに私たちは、社員の健康チェックまで自動化できるのではないかと考えています。集められた健康情報から自動的に社員のリスクを算出し、今どの社員にサポートが必要かどうかがわかるようになるのです。このような仕組みがないと、医師によって言っていることが異なり健康の標準化がされません。医療の質をあげるためにも標準化は必要不可欠です。そのためには、第一歩として健康情報の電子化が必要なのです。
(聞き手 / 北森 悦)
医師プロフィール
山田 洋太 産業医、心療内科
金沢大学医学部卒業。離島医療を経験し、その後慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)を修了。現在は、株式会社iCAREの代表取締役を勤めながら、診療内科医、産業医として診療も行っている。