お腹の弱い人必見!今日から始められるお腹のリラックス法
記事
自律訓練法とはドイツの精神科医シュルツが創出した「リラックス方法」で、心理学の世界で発達してきました。人間の身体は、緊張が強かったり不安があったりすると、徐々に硬く強張っていきます。それらの信号が脳や神経系に伝わり、痛みや不快感などを感じやすくなることが言われています。
行い方は、左右腕や足の脱力、温覚の調整、心音などに意識を向けることによってリラックスしていきます。(参考:Wikipedia 自律訓練法)専門の心理士のもと指導を受けるのが良いとされていますが、最近では本やインターネットなどでも方法が示されており、徐々に一般の方々に広がってきている印象です。
さて今回は、この自律訓練法が過敏性腸症候群(IBS)に効果があるか調べた論文をご紹介致します。
Appl Psychophysiol Biofeedback 2010;35:189-198
<方法>
・IBS患者21名をランダムに自律訓練法群、対照群に分けた
・自律訓練法群は2~4週間に1回、全8回にわたり専門の心理士による指導を受けた。自宅でも練習することを推奨された。
・対照群は食事習慣などについて心理士と話し合い、助言や参考資料をもとに生活した。
・IBS症状度合い(adequate relief)、IBS症状質問紙(SIBSQ)、不安(STAI)、うつ(SDS)、一般的身体症状(SF-36)に対するアンケートを実施
<結果>
・IBS症状改善:自律訓練法群(9/11名)が対照群(3/11名)に比べ有意に高値
・SF-36の社会的機能、身体疼痛のスコアが自律訓練法群で有意に改善
IBSは緊張や不安など、脳やストレスホルモンとお腹の関連がわかってきています。自律訓練法は、脳やストレスホルモンなどのバランスを調整することで、お腹の疼痛や過度の運動を和らげると推察されています。
また、自律訓練法は不眠に効果があるとされ、IBSに不眠症の方も多いことから(おなかと睡眠)、交感神経活動を下げて、体のリズムを整えやすくすることも考えられます。正しい方法で行えば、副作用はほとんどなく、かつ1人ですぐに試せる方法です。知っておくと、どこかで役に立つかもしれません。
医師プロフィール
田中 由佳里 消化器内科
2006年新潟大学卒業、新潟大学消化器内科入局。機能性消化管疾患の研究のため、東北大学大学院に進学。世界基準作成委員会(ROME委員会)メンバーである福土審教授に師事。2013年大学院卒業・医学博士取得。現在は東北大学東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門助教。被災地で地域医療支援を行うと同時に、ストレスと過敏性腸症候群の関連をテーマに研究に従事。この研究を通じて、お腹と上手く付き合えるヒントを紹介する「おなかハッカー」というサイトを運営。また患者の日常生活課題について多職種連携による解決を目指している。
【おなかハッカー】