便秘にとって水分摂取は大事?
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梅雨に入る前のこの季節、湿度は高すぎずカラッと過ごしやすい日も多いですよね。しかし臨床現場では、このような日が続くと、脱水症状の方が搬送されるケースが増え始め、それに伴い、便秘症を訴える患者さんもやや増加してきます。
今回の論文は、「便秘の人は思った以上に水分を摂っていない場合もある」というもの。因みに、一日にどれくらい水分を摂取されていて、どれくらい身 体に足りているか考えながら生活されている方はどの程度いらっしゃるものでしょうか。これからの時期、水分摂取が大切ですよ!というメッセージも込めて、 ご紹介いたしましょう。
Association of low dietary intake of fiber and liquids with constipation:
evidence from the National Health and Nutrition Examination Survey.
Am J Gastroenterol. 2013;108(5):796-803.
<対象>
・調査で登録された10,914人の成人のうち、ブリストル便性状スケールtype 1, 2 を満たす者
※ type 1 硬くてコロコロの兎糞状の便
type 2 ソーセージ状であるが硬い便
・食物線維摂取量、水分摂取量を食事記録より算出
・年齢、BMI、教育歴、一般健康状態、慢性疾患、運動などを変量として解析
<結果>
・9,373名が必要質問事項に解答あり (女性 4,787名、男性 4,586名)
・女性 10.2%, 男性4.0%が便秘
・女性において、水分摂取量の低さが便秘と関連
・食物線維摂取量と運動量は便秘と関連を示さず
この論文では水分量は、食事に含まれる水分量も含めて換算されているためmg/mlとなっています。1日に1882mg以下の水分量を摂取している方は、有意に便秘の方が多かったそうです。
普段の生活で、どれくらい水分をとればいいのでしょうか?様々な計算式がありますが、最もわかりやすいものとして以下のものがあります。
30~35 × 体重(kg) = 1日に必要な水分量
※運動などによる発汗が強ければ 50 × 体重(kg) 程度まで増量
因みに、生きているだけで一般成人は1日あたり約900mlの水分を毎日皮膚や気道から放出しています。これを不感蒸泄と言います。尿、排便中の水分量(尿 約1L、便 約200-300ml)、そして汗も身体から出ていく水分量として加える必要があります。
一方、1日この出て行く以上の水分量を摂取する必要があります。よって、汗の量や食事の水分量なども考慮して飲水量を考えなくてはなりません。先程の計算式について、一般的に活動している成人の方は上記式の水分量が必要最低限量と考えて頂いて良いかもしれません。
腎臓病や糖尿病、心疾患などをお持ちの方は、水分を摂り過ぎると悪影響が出る場合もあるので、主治医にご相談下さい。また、水分のみならず、電解質の摂取も身体の水分バランスに重要とされています。
季節の変わり目、スムーズに乗り越えられるよう、身近なことを気にしてみると良いかもしれませんね。
医師プロフィール
田中 由佳里 消化器内科
2006年新潟大学卒業、新潟大学消化器内科入局。機能性消化管疾患の研究のため、東北大学大学院に進学。世界基準作成委員会(ROME委員会)メンバーである福土審教授に師事。2013年大学院卒業・医学博士取得。現在は東北大学東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門助教。被災地で地域医療支援を行うと同時に、ストレスと過敏性腸症候群の関連をテーマに研究に従事。この研究を通じて、お腹と上手く付き合えるヒントを紹介する「おなかハッカー」というサイトを運営。また患者の日常生活課題について多職種連携による解決を目指している。
【おなかハッカー】