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米国以外への臨床研修を成し遂げる方法を伝えたい

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小児外科医の清水徹先生は、南アフリカやオーストラリアといった国々での臨床研修を実現させました。アメリカ以外の国へ臨床研修する道があることを伝えたいという清水先生に、どのようにして臨床研修の道を切り開いたのか、研修生活を乗り切っていったのかを伺いました。

◆南アフリカ・オーストラリアの臨床研修へ

―南アフリカ・ケープタウンの小児病院、オーストラリア・シドニーの小児病院に臨床研修した清水徹先生。最初に、臨床研修を考えた理由から教えてください。

大学時代に途上国を旅行する中で、医師として途上国の支援に携わりたいと思ったことが医師になろうと思った最初のきっかけです。そのため医学部入学時から海外での臨床研修を意識し、英語のテキストを使って勉強するなど、可能な限り英語に触れる機会を作っていましたね。

―臨床研修を考える人の多くは、アメリカを最初の候補地に上げると思います。

やはり他の国への臨床研修に比べると、多くの日本人が行っていて圧倒的に情報量がありますから、目標にしやすいです。また渡米後も、実力さえあればレジデンシーからフェロー、スタッフとなることで、アメリカで働き続けられる可能性があります。これは、アメリカに行くことの大きなメリットです。

しかし、USMLEの難しさが大きな壁です。だからこそ私はより多くの日本人医師に、アメリカ以外の国への臨床研修を選択肢として認識してもらいたいと思っています。そのために、自分の経験してきたことを積極的に発信するようにしています。

◆臨床研修への道を切り開き、乗り切る方法

―実際どのようにして、ケープタウンの病院やシドニーの小児病院への臨床研修に至ったのですか?

アメリカ以外の国への臨床研修で難しいのは、とにかく情報が少ないことです。分かりやすい形で外国人医師を公募している病院も少ないです。海外の病院とのつながりがある医局に入っていれば、交換留学のような形で行くことも可能だったのかもしれませんが、私は医局に入っていなかったので、情報を手に入れることが困難でした。

そんな状況だったので、私は国際学会などに参加し、見学に行きたい病院の医師に話しかけることから始めました。その医師の発表があれば、会場と発表時間を事前にチェックし、論文も読み、あらかじめ話す内容を考えた上で、「あなたの病院に興味があるので、よかったら見学させてもらえませんか?」と、名刺を片手に声をかけていきました。こうすることでまずは病院見学にこぎつけて、面接や採用のプロセスにたどり着きました。

地道なやり方ですが、直接会って話すことは重要だと思います。直接話すことで、英語力をアピールできますし、熱意を感じ取ってもらえます。

―そうしてケープタウンの小児病院やシドニーの小児病院での勤務が決まったのですね。実際に勤務する中で重要だったことは、どのようなことでしたか?

何よりも英語力に尽きます。もちろん臨床研修を考えている人は英語を勉強していると思いますが、自分の専門領域のことを英語で話せないと、医師として信頼されません。私のように外国人枠で臨床研修を受け入れてくれる病院は、即戦力を求めています。専門領域の知識やスキルを備えていることは当然ですが、それ以前に英語力もなければ仕事になりません。私は小児外科医なので、麻酔科医とコミュニケーションを取ることが大事です。緊急手術の申し込み1つにしても、英語が通じなければ信頼されません。

―どのようにして英語力を高めていったのかを教えてください。

日本国内で英語力をつけていくことは非常に難しいと思いますが、可能な限り日常的に英語を使う外国人と接する機会を増やすことが重要だと思います。また臨床研修中、私は5分程度のオチがある鉄板ネタを作っておき、日常会話の中で〇〇の話題が来たら△△の話をする、とあらかじめ決めていました。そうすればネイティブと食事している時に狙っていた話題が来たら、5分間自分の話ができます。

たった5分と思うかもしれませんが、5分間話し切ることで自分自身も満足できますし、全く話さないよりは相手も印象も変わります。その小さな成功体験を積み重ねていけば、少しずつ自然と話せるようになって英語力の向上につながります。

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医師プロフィール

清水 徹 小児外科

慶應義塾大学法学部を卒業し一般企業に就職。琉球大学医学部に学士編入学。沖縄県立南部医療センター・こども医療センターにて初期研修を修了。在沖縄米国海軍病院にて1年間のインターンを経て、手稲渓仁会病院で外科後期研修、沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで小児外科・救急研修を修了。2016年9月から、南アフリカ・ケープタウン Red Cross War Memorial Children’s hospitalにて小児外科フェローとして勤務。その後アフリカ諸国(マラウィ、ルワンダ、ガーナ、シエラレオネ)を周り、2018年2月からオーストラリア・シドニー Children’s Hospital at Westmeadで小児外科フェローとして勤務。2019年4月より長野県立こども病院小児外科フェローとして勤務、現在に至る。

清水 徹
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