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秋田全県の重症患者の命をもっと救いたい

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記事

秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターの救急医として活躍する佐藤佳澄先生。同院総合診療センターの特任助教として研究や教育にも携わりながら、限られた医療資源を活用し、多くの重症患者の命を救う体制づくりにも注力しています。その想いと取り組みについて伺いました。

ドクターカー導入とCase report教育

―現在の取り組みを教えてください。

2017年から秋田大学医学部附属病院救急部で救急医療に従事してきましたが、2021年2月に秋田大学医学部附属病院総合診療医センター特任助教を拝命し、臨床だけでなく教育・研究にも取り組み始めました。

臨床では、救急医として救急外来と集中治療室での治療を行っています。同年4月には秋田大学医学部附属病院に高度救命救急センターが開設され、より幅広い患者さんを受け入れるようになりました。敗血症や交通外傷の重症患者さんだけでなく、老衰や末期がんなどの高齢患者さんも増えています。

研究については、主に2つのことに取り組んでいます。1つ目は血液浄化療法の研究。もう1つは、最近力を入れているCase reportの作成です。昨年度は5本程書いて国際学会などで発表もしました。

教育については、秋田大学の医学生に対する救急と心臓蘇生に関する講義と、秋田県内の研修医を対象に救急エコーセミナーを実施しています。後者は1〜2年前から取り組んでいて、研修病院に出張し、救急外来でのショック患者さんにエコーを使って原因を究明していくシミュレーション・トレーニングを行っています。秋田大学にシミュレーション教育センターがあり、そこの医師の主導のもと、私たち救急医はコースインストラクターとしてトレーニングに携わっています。

―特に力を入れていることはありますか?

2つあります。1つはドクターカーの運用です。先程も言ったように、2021年から当院には高度救命救急センターが開設されました。当院には現在救急医が11名が在籍していますが、秋田全域で見ると、秋田市以外の地域の救急科にはほとんど救急科専門医がいません。

このような状況なので、例えば地域の救急外来に呼吸不全や循環不全など重症患者が搬送された場合、すぐにキャパシティ・オーバーになってしまいます。そうすると、診られるはずの中等症患者が診られなくなる可能性もあります。

また、各地域から重症患者が当院に搬送されてくるのですが、搬送途中で心肺停止になってしまうことも、年に数回起きてしまっています。地域の救急医療を維持するためにも、重症患者を救うためにも、当院の救急科専門医が1秒でも早く重症患者を診療できるようにするためドクターカーを導入し、体制を整えているところです。

もう1つは「Case reportの教育」です。私のメインは救急医なのですが、家庭医や総合診療医が在籍している秋田大学医学部附属病院総合診療医センターにも関わっています。そこで、総合診療的なマインドや救急的なマインドをアカデミックに学べるように、患者さんから得た知見を症例報告論文にまとめるCase reportを普及させていきたいと考えています。

Case reportを書きたいと思っていても「どうやればいいのか分からない」「英語力に自信がない」などの理由で、一歩踏み出せない人が多いようです。そういう人たちのために、私がこれまで蓄積してきたCase reportに関する知識やノウハウをしっかり伝えていきたいと思っています。

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医師プロフィール

佐藤 佳澄 救急医

秋田県出身。2015年秋田大学医学部を卒業後、秋田大学医学部附属病院に入局。2017年より同大学病院救急部医員となり市中の関連病院などで研鑽を積む。2021年からは秋田大学附属病院総合診療医センター特任助教も務める。

佐藤 佳澄
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