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臨床で得た知見を世界で共有し、患者を救う一助に

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医師7年目の小野亮平先生は、千葉大学医学部附属病院循環器内科で臨床に携わる傍ら、研究にも力を入れています。これまでに学術誌などに掲載された論文は50本あまり。その原動力になっているのは、留学先のポルトガルで医師から掛けられた一言でした。小野先生に、研究に込めた思いや若手医師へのメッセージを語ってもらいました。

◆論文や学会発表で、自身の経験を世界に積極的に発信

―後期研修の後、母校の千葉大学に戻られて2年が経ちました。附属病院では、どのようなことに携わっているのですか?

研修医時代では診ることのなかった、重症の患者さんを担当しています。例えば心筋症や冠動脈疾患、心臓移植。このほかECMOをはじめとした補助循環装置や、植え込み型補助人工心臓(VAD)の装着も大学に戻り経験しました。

3年目の今年は、心不全チームに所属し、重症心不全の患者さんの診療に当たっています。心筋症などで極度に心機能が低下し、内科的治療での回復が見込めない場合は、心臓移植を行う必要があります。心臓移植に関われるのは、大学病院だからこそできることですし、一人でも多くの命を救いたいと思って医師になったので、やりがいを感じています。

―臨床に携わる一方で、精力的に論文活動や学会活動をされるのには、何かきっかけがあったのですか?

医学部時代から循環器内科教室で研究をしたり、論文を書いたりしてきました。その延長線上で続けていることなんです。きっかけを強いて挙げるとすれば、短期留学先のポルトガルで指導教授からかけられた一言だと思います。

その教授から「自分だけが経験したことを、自分の中にしまっておいては意味がない。世界に共有して初めて、患者さんに還元できるんだ」と言われたのです。以来、自分が新しいと思ったことや経験したことを、できるだけ多くの人の目に触れられるよう、英文の論文を投稿したり、国内外の学会で発表したりするなどしています。

医師になって7年、これまでに書いた論文は50本を超えます。昨年はFirst authorで22本が学術誌に掲載されました。中でも、欧州心臓学会(ESC)で発表した「Hyperperfusion Injury after Percutaneous Transluminal Renal Angioplasty for Renovascular Hypertension as Sequelae of Neuroblastoma」の症例が、科学的・教育的価値があるとして「ESC Clinical Case Gallery」に選出されたのは光栄なことでした。また国内では、日本心血管インターベンション治療学会関東甲信越地方会の症例検討部門、日本循環器学会関東甲信越地方会のCase Report Award、Clinial Research Awardでいずれも最優秀演題賞をいただくことができました。

◆ジェネラルな視点を持つ循環器内科医を目指して

―最初から循環器内科を志望していたのですか?

循環器というより、ジェネラル志向が強かったですね。実は、ポルトガルの他にも米国やドイツ、韓国、タイなどに留学した経験があります。世界で活躍されている医師たちは、病態だけでなく、その背後にある患者さんの生活習慣なども含めた全身を診られるスキルを持った上で、それぞれの専門性を突き詰めていることを目の当たりにしました。そのような海外の医師たちへの憧れがあったのです。

循環器内科は、心臓や血管の病気を対象にします。慢性から急性疾患まで、関われる診療の幅が広い点に惹かれました。生活習慣病との関連性も深く、ジェネラルな視点も必要とされるので、循環器内科を専門にしたのは、ごく自然な流れだったと思います。

―医学部卒業後、初期研修先に湘南鎌倉総合病院を選んだのはなぜですか?

 一つの臓器を専門にするより、ジェネラルにいろいろな疾患を診たいと思ったからです。湘南鎌倉総合病院は、救急搬送台数が年間約1万4000台と、救急患者の受け入れ件数が全国トップクラスの病院です。たくさんの症例に接することができ、学ぶことも多いと考えました。また、論文作成や学会発表などを積極的に行い、世界に発信していく風土も醸成されていて、多忙な中でも、研修医の先生たちが生き生きと志高く取り組む姿に刺激を受け、自らもその環境に身を置きたいと思ったことが決め手でした。

―実際に研修を受けてみていかがでしたか?

ERでは2年間で1200ほどの症例に接し、どんな患者さんでも診るという精神が養われました。学術面でも、疑問や興味が次々と湧いてきて症例別にまとめたところ、先生方から適切なフィードバックをいただきました。それをもとに、2年間で10本の論文執筆と12回の学会発表を行い、そのうち日本内科学会や日本救急医学会など3つの学会で賞をいただけたことは、学術活動を続けていく上での大きな自信になりました。臨床においても研究においても、湘南鎌倉総合病院での経験が、医師としての原点になっています。

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医師プロフィール

小野 亮平 循環器内科

2016年千葉大学医学部卒業。湘南鎌倉病院での初期研修を経て、松戸市立総合医療センターで後期研修を修了。2018年にはHarvard Medical SchoolのIntroduction to Clinical Research Training Japan Programを修了。2020年から千葉大学医学部附属病院循環器内科。現在に至る。

小野 亮平
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