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小児医療に足りないところを補って、全ての子どもがハッピーな社会を

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記事

「小児科医である以上、子どもの心も体も診られるジェネラリストでありたい」。こう語るのは、千葉県こども病院救急総合診療科医長を務める小川優一先生です。臓器別サブスペシャリティを選択する医師が多い中、小川先生はあえて総合診療へと進みました。現在は児童虐待への対応をライフワークとし、卒後教育にも力を入れています。ここに至るまでの過程と、現在の取り組みについて伺いました。

虐待の連鎖を食い止めることは、次の世代の子どものためにもなる

―児童虐待への対応をライフワークにされた経緯を教えてください。

以前勤務していた東京都立小児総合医療センターで、虐待を受けた子どもを相当数担当したのがきっかけです。彼らの親の多くは、自身も子どもの時に虐待を経験した当事者。もし当時の小児科医が気付いて対処していれば、自分が受けた辛い思いを子どもにさせる、いわゆる「虐待の連鎖」は起こらなかったのではないか、と思いました。

傷ついた子どもたちが搬送されるのは病院です。目の前に虐待が疑われる子どもがいるのであれば、私たち医師が見抜き、毅然と介入していく必要がある。そうでなければ、その子どもが大人になったときに、同じような悲劇を起こしてしまうかもしれない、と危機感を抱いたのです。

―具体的には現在、どのような取り組みをされていますか?

まずは、虐待対応に強い病院にするべく、千葉県こども病院内でできることから進めています。先日は、専攻医にレクチャーを行いました。実は、傷ついた子どもを目の前にしても、医師は「これは虐待ではないかも」というバイアスにかかりやすいんです。そのバイアスを避けるためにチームで対応し、最後まで疑って考える必要があることなどを説明しました。虐待の連鎖を食い止めることは、目の前の子どもだけでなく、次の世代の子どものためでもあるのだということも強調しました。

また、ワンストップセンターの設立を視野に入れて月1回、検察や警察、児童相談所とミーティングを重ねています。医師が虐待を疑っても、警察や児童相談所に通告するタイミングが難しいのです。各機関が垣根を越えて連携できれば、早期の対応が可能になります。それぞれの機関で聞き取りを行う現状では、そのたびに子どもは嫌なことを思い出さなければなりません。それがトラウマの原因にもなっていることを考えると、ワンストップセンターの設立は不可欠。昨年始まったばかりの取り組みですが、少しずつ前進していると感じています。

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医師プロフィール

小川 優一 小児科

2010年順天堂大学医学部卒業。亀田総合病院で初期研修と小児科専門医研修を終える。その後、東京都立小児総合医療センターで総合診療科サブスペシャリティレジテントを経て、同センター総合診療科に入局。2021年から千葉県こども病院救急総合診療科。予防のための子どもの死亡検証委員会(小児科学会内)委員、医療機関向け虐待対応プログラムBEAMS講師も務める。

小川 優一
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