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「健康」に仲間と共に生きられる地域をデザインしたい

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医師6年目の守本陽一先生は、学生時代から地元で「地域に出ていく」活動を続けてきました。2020年には、シェア型図書館「だいかい文庫」をオープン。これまでの取り組みの中でどのような気付きを得て今に至り、どういったことを実現しようとしているのでしょうか?

◆シェア型図書館「だいかい文庫」から生まれたもの

―2020年12月、勤務地の兵庫県豊岡市にシェア型図書館「だいかい文庫」をオープンさせました。ここでは、どういったことをしているのでしょうか?

基本的な機能としては図書館です。地域の方々が本を借りに来たり、返しに来たりする。その体験の中で、スタッフや来た方と話したりできる空間になっています。

また、週1回「居場所の相談所」を開いて、どんなことでも相談できるようにしています。相談に来ていた方が「この場所なら自分を発揮できるかもしれない」と始めた表現活動が「だいかい大学」という市民大学に発展した例もありますね。

他にも失業していた方が、ここでつながりが生まれたことでお店番をするようになり、地域での役割ができたことで自己効力感が少し高まり、新しい仕事が決まったこともありました。

ただつながりがうまれるだけでなく、回復する過程で内発性や当事者性のようなものが得られる場所にもなっているのだと思います。

―なぜ、図書館という形にしたのですか?

ケアを求めている方や必要としている方に、「ケアします」と真正面から向き合おうとしても避けられてしまうことも少なくありません。「ケアの場」に来てもらうために、ケア以外の目的にずらすこともひとつの方法です。その時、図書館はある種の公共空間性があるので、それが有効に働くと思いました。

あと、恐らくほとんどの人は本を読んだことがあって、誰もが接点を持っていること。そして、本には著者の思いが全て載っているからこそ、自分自身の思いも乗りやすいといいますか、好きな本はある意味、自分の思いの代弁をしてくれる側面があります。

そのため図書館では、人と人とが直接話し関係性が生まれる以外に、本を媒介とした関係性も生まれてくるように思います。そういった良さから、図書館という形にしました。

―だいかい文庫がオープンしてから2年が過ぎました。効果などは感じていますか?

だいかい文庫に来ている方に関しては、居場所や役割を得られて回復する方もいますし、表現活動を始める方もいます。来ている方は、それぞれに得ているものがあると思います。

それ以外に、利用していない方に対しての効果もあると、質的なインタビュー調査で分かってきました。調査の中で「だいかい文庫があることによって地域が変わっていく感覚がある」とする方が一定数いらっしゃったのです。実際に、だいかい文庫でお店番をしていた方が、閉館しそうな映画館を引き継ぐNPO法人を立ち上げ、地域の方、地域の子どもたちのための開かれた空間として映画館の運営を継続しています。

だいかい文庫に来ている方だけが幸せになるのではなく、だいかい文庫が核となり社会包摂的な側面を持った場を編んでいきたいと考えていたので、まさにそのような方向に動けているのかなと思っています。

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医師プロフィール

守本 陽一 総合診療医

2018年自治医科大学医学部医学科を卒業。公立豊岡病院で初期研修を修了し、2020年4月より兵庫県丹波地域医療総合診療プログラムを専攻。2022年4月から豊岡健康福祉事務所(豊岡保健所)に所属。学生時代から、地元・兵庫県豊岡市でYATAI CAFE(モバイル屋台de健康カフェin豊岡)をスタート。2020年11月に一般社団法人ケアと暮らしの編集社を設立し、シェア型図書館「だいかい文庫」を開設。2023年3月、京都芸術大学大学院学際デザイン研究領域修士課程卒業(芸術修士MFA)。

守本 陽一
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