頭痛や肩こり、目の疲れ……もしかしたら眼瞼下垂かも!?
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◆若いのにまぶたが下がる!?
眼瞼下垂とは、まぶたが垂れ下がってくる状態のこと。生まれつきの場合もありますが、多くは加齢によって皮膚がたるむことが原因です。そのため、高齢者にはよく見られる状態です。ところが近年、20代や30代の若い人が眼瞼下垂で診察にくることが増えています。若くして眼瞼下垂になる原因には、実はアトピー性皮膚炎や花粉症、コンタクトレンズの長期装用など、生活に身近に関係する理由が挙げられるのです。
そもそもまぶたの裏側には眼瞼挙筋という筋肉があり、そこからつながる挙筋腱膜という腱膜がまぶたの縁にある瞼板にくっついてまぶたを引き上げています。この挙筋腱膜が弛んだり、瞼板からはずれたりすると、眼瞼挙筋の機能が弱まりまぶたが下がるのです。
では、なぜ若いのに挙筋腱膜の機能が弱まるのでしょうか。それは、“まぶたをこする”ことに理由があります。先ほど挙げたコンタクトレンズなら、長期装用で挙筋腱膜がこすれる頻度が高くなります。アトピー性皮膚炎や花粉症などの場合は皮膚や目がかゆくてまぶたをこすることで挙筋腱膜に影響を与えるのです。
◆さまざまな症状の原因に
眼瞼下垂になると、まぶたが垂れ下がって視野が狭くなるため、周りが見えづらくなります。しかし、それだけでなく、額のシワの増加、頭痛や肩こりといった症状まで引き起こします。
額にシワが増える理由は、まぶたが垂れ下がって見えづらくなるために、眉毛を挙げて視野を広げようとするから。また、視野を広げるために、いつもあごをあげてすこし上を向いているような状態の人もいます。さらに、このように一生懸命視野を広げようとすることで、頭の前の筋肉が緊張し、さらにその緊張が後頭部の筋肉にも伝わり、頭痛や肩こりといった症状が出ることもあります。もっとひどい場合は、自律神経失調症を引き起こし、不眠や便秘、うつなどの症状がみられることがあります。つまり、眼瞼下垂を放置しておくと、日々の生活に支障をきたす状態を導きかねないということなのです。
ちなみに眼瞼下垂になったら、治療方法は手術しかありません。加齢性の眼瞼下垂の手術は余分な皮膚を切除しますが、腱膜性眼瞼下垂の場合の手術は、挙筋腱膜を前転して固定し直したり、短縮固定したりする方法がとられます。手術は日帰りで終わり、当日から日常生活は可能です。けれど、手術後は1週間ほどまぶたが腫れて赤くなることもあり、できれば眼瞼下垂は防ぐべきです。
日々できる予防方法は、まぶたに負担のかからない生活をすることです。コンタクトレンズを使用している人は、レンズを必要としない時間はなるべく眼鏡で過ごすようにしましょう。また、アトピー性皮膚炎や花粉症などを発症している人は、まず症状が軽くなるように治療することから始めましょう。これを機会に、改めて目もとの健康と美容について考え直してみてはいかがでしょう。
医師プロフィール
村井 繁廣(むらい しげひろ) 形成外科
村井形成外科クリニック院長、医学博士
平成18年10月、世田谷区成城、小田急線成城学園前駅ビルに村井形成外科クリニックを開設、現在に至る
経歴:東京慈恵会医科大学形成外科学講座助教授(准教授)、厚木市立病院形成外科部長等を歴任
資格:日本形成外科学会認定専門医、日本形成外科学会認定皮膚腫瘍外科指導専門医
所属:日本形成外科学会会員、日本美容外科学会正会員、ISAPS(国際美容外科学会)active member、日本レーザー医学会会員