娘・息子を待っている。島根県益田市医師会が始める「親父の背中」プログラム
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島根県益田市。海と山、そして川までもが豊かなこの地にて、2017年春より新たに「総合診療医を育成するプログラム」が始まります。
主な指導陣は医師会の先生方。プログラムの軸足は益田医師会病院に置き、週に数回は、開業医の先生方の外来に学ぶことを計画しています。医師会病院内では、総合内科病棟における入院管理に加え、内視鏡スペシャリストの院長から直接手ほどきを受けることができます。さらに、地域のニーズに合わせた人間ドックや嚥下訓練を含めたリハビリ、医師会の先生方と連携した在宅医療も、研修プログラムで提供する予定です。
開業医の先生方からは、慢性期のフォローアップや漢方薬の使い方、整形外科や耳鼻科、皮膚科、泌尿器科から小児科、さらにはへき地診療所の代診まで、「自分の強化したい分野」を選択して学ぶことができます。
このプログラム誕生の背景には、深刻な “医師不足” の問題がありました。
「このままでは、いけない。若手医師に来てもらえるような地域にするには、どうしたら良いだろうか?」
医師会の先生方が苦心の末に辿り着き、新たに生み出された “答え” こそが、この「親父の背中」プログラムです。
「耳鼻科のファイバーまで、いや鼓膜切開まで教えましょう」
そう意気込むのは、教育熱心な医師会長。他にも実に経験豊かな頼もしい先生方が、プログラム研修生を力強くサポートしてくれます。
優しい人柄の前医師会長や、難しいマネジメントにどう向き合うか、いつも歯切れ良く教えてくれる面倒見の良い副会長。
地域を支える数少ない皮膚科医でありながら内科医としても活躍する先生や、プライマリ・ケアの整形外科領域を熟知しておられるダンディーな先生、頻尿や膀胱炎、慢性腎炎のコントロールについて精通しているスキー好きな泌尿器科の先生。さらには、学校とタッグを組んで小児の思春期外来をされていてサイクリング大好きな先生から、1,200名の集落を一手に担うへき地診療所を守る、鮎釣り名人の先生もいます。
今回2泊3日の旅程で、プログラムの詳細を詰めるために益田医師会病院を訪ねましたが、地元を真摯に慈しみ 医師会を愛する先生方の姿は、まさに “息子や娘の帰りを待ちわびる親父” そのもの。
「自分だったら、どんな研修を受けたいか?研修生の希望に沿うには、どうしたら良いか?」
そんなことについて、先生方と延々と議論を重ねたあの時間は、我々ゲネプロメンバーにとって、決して忘れることのできないものとなりました。
益田市医師会が提供する「親父の背中」プログラムは、2年間のプログラムとして2018年4月からスタートします。
島根県や山陰地方が地元の方や、別の地域出身だけども田舎や地方が好きな方、あるいは将来的に開業医となることを目指す方など、少しでもこのプログラムに心を惹かれる方がいらしたら、是非一度、島根県益田市医師会のホスピタリティに触れてみてください。知識も技術も人生も―。きっと “親父” たちの背中は、多くのことを物語ってくれるはずです。
医師プロフィール
齋藤 学 救急科
合同会社ゲネプロ
2000年順天堂大学医学部を卒業、千葉県国保旭中央病院にて研修。2003年から沖縄県の浦添総合病院、鹿児島県徳之島徳洲会病院などに勤務し、2015年合同会社ゲネプロを設立、代表に就任する。2017年4月から「日本版離島へき地プログラム」をスタートさせた。
ゲネプロ