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不妊治療を受けている患者の6割には病名がない

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妊娠を希望する高齢の患者さんに、不妊治療専門クリニックを紹介するタイミングに悩む医師は多いのではないでしょうか。特に地域によっては、患者さんが持っている情報が少ないこと、経済的にも余裕のない患者さんが多いことを考えると、「不妊治療の選択肢を得ることで余計に悩みが増えるのではないか」と、情報を伝えるべきか悩むと思います。
しかし、長年不妊治療専門クリニックを運営されている原利夫先生は、不妊治療に関する情報の地域差よりも深刻な問題が横たわっていると言います。

地域によっては不妊治療を環境的、経済的に受けにくいという意見があります。、日本には体外受精ができる医療施設が600か所あり、世界でも一番の施設数です。地方では少子化対策として、体外受精に助成金を出すところもありますが、そもそも不妊に対する認識を変えていかなければならなければ、不妊の問題は解決されません。

変えなければいけないことの1つに、「妊娠は自然にするべきだ」「病院にかかってまでも赤ちゃん作るのはおかしい」という意識があります。そのような意識が、不妊で悩む夫婦になくても、その両親や家族に残っていることがあるのが事実です。

他には、少し前までは不妊の定義は「2年妊娠しない状態」でしたが、最近WHOが出した定義では、「パートナーがいない状態」という形に変わってきています。そうです、不妊治療を「受ける/受けない」以前に、結婚しない人が多く、そもそも結婚相手を探す・パートナーを探すことが、日本では必要になってきているわけです。

実は、私は思春期学会にも関わっています。高校生の性教育を変えていき、妊娠とは何か、家庭とは何かをきちんと教えていかないとパートナーを作る段階に進めず本当の意味での不妊症はなくならない。

私のクリニックに来ている患者さんの60%は、病名がないです。患者さんの平均年齢は38.5歳で、60%程度の方の不妊原因が高齢、つまり加齢なのです。このように不妊治療を広める以上に、生物的に最適な妊娠時期と、社会的な妊娠の時期との両方で認識を変えていかないといけないと考えています。

(聞き手・構成 / 田上佑輔)

社会的卵子凍結をやめた理由

 高齢出産が増える今、自然治療を使って妊娠力を上げたい

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医師プロフィール

原 利夫 産婦人科

はらメディカルクリニック院長  
医学博士。1983年慶応義塾大学大学院医学研究科修了にて医学博士学位を取得する。同大産婦人科助手を経て、1987年東京歯科大学市川病院講師、1989年千葉衛生短大非常勤講師となる。この間、日本初の体外受精凍結受精卵ベビー誕生のスタッフとしても活躍する。1993年、不妊治療専門クリニックはらメディカルクリニックを開設。専門は生殖生理学、内分泌学、精子学

原 利夫
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