「ストレスで白髪が増える」というのは本当か?
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ヒトはなぜ白髪になるのでしょうか? ヒトの毛の色は人種によって金色、褐色、黒、グレーと、さまざまですが、これらはメラニン色素によって決まります。そして、白髪が増える時期には人種や個人による差はあれど、加齢とともに白髪になることは共通しています。
白髪化はメラニン色素を作るメラノサイトの機能の低下や消失により、毛からメラニン色素が消えていくために起こる現象です。よく、ストレスなどで白髪になるという言い伝えがありますが、これには科学的根拠はありません。
そもそも髪の毛というのは、すでに死んでしまっている細胞からできているのです。そのため、精神的なショックなどの影響で一夜にして白髪になるなどということはないですし、ストレスなどによって白髪化が進むということもありません。
しかしながら、一気に白髪が目立つようになる例はあります。例えば、白髪まじりの方が円形脱毛症にかかった場合などが挙げられます。円形脱毛症にかかると、脱毛は一気に進みます。
また、円形脱毛症は毛母メラノサイトが存在する黒髪の毛根の方が影響を受けやすく、黒髪の方が早く抜けてしまうといった現象がおきます。そのため、白髪まじりの方が円形脱毛症を発症した場合、まず黒髪から抜けていくので、白髪が目立ち、一気に白髪が増えたといった印象を与えることがあるのです。
先に述べたように、白髪化を進める原因=ストレスではありません。それに対し、円形脱毛症は、ストレスが引き金となって起きうるものです。それら2つの情報が混在した結果「ストレスによって白髪が増える」と言われるようになったのではないでしょうか。
ちなみにAGA(男性型脱毛症)も、ストレスとは全く関係ありません。抜け毛や白髪が気になり始める時期は30代後半以降が多く、仕事や家庭においてもストレスを感じやすい時期と重なる傾向にあります。そのため、髪の毛とストレスが関連した神話が生まれたのだと考えられます。
医師プロフィール
高橋 栄里 美容皮膚科
1999年藤田保健衛生大学卒業後、都内および神奈川の大学病院にて外科系を中心として形成外科、皮膚科、麻酔科、救命救急医療などを習得。
その後、大学病院および関連病院にて一般皮膚科・美容皮膚科外来を担当し、美容皮膚科クリニックの院長就任経験をもつなど、美容皮膚科領域においても数多くの症例をこなした。
某大手AGA専門クリニック院長に就任し、AGA統括指導医として活躍後、東京神田にてAGA専門クリニックを設立。
現在、麻布ビューティークリニック(注入専門の美容皮膚科)兼任、注入治療のエキスパートとしても活躍中。また、美容皮膚科医としてスキンケアの指導にも定評がある。