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「知らないことすら知らないこと」を伝える

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人は脳の一部の機能しか使っていなくても、全てが使われているかのごとく生きてしまっています。けれど、それではもったいないと思います。

私は皆さんが「知らないことすら知らないこと」を伝える仕事をしています。

皆さんは皆さんの中に「知っていることと知らないことがある」、そして「知らないことはたくさんある」ということを知っています。でも、それは「知らないと知っている」領域の「知らないこと」です。そして、多くの方が「自分が知らないと知っていること」を求めて私のところへやって来られます。

私が伝えたいことは、クオリティー・オブ・ライフです。つまり「人生の質」です。例えば、時間の質とか、行動の質とか、その「質」の部分が皆さんの心に大きく影響しています。そして、その「質」には、自分自身の心の状態や脳の機能が関与しており、 このことは、実は皆さんが「知らないと知っている」領域を超えています。ですから、「知らないことすら知らない」このことを、お伝えしたいのです。

通常、人は「知らないと知っている」領域の中で学ぶことを求めているので、「知らないことすら知らない」領域に触れると、なかなか受け入れられない傾向があります。人はどうしても認知で聞いてしまうので、自分の枠組みに入るもの以外は、もう聞こえない。

しかし、私が伝えたいのは「質」。「知らないことすら知らない」脳の仕組みです。そして、それは、誰もが持っている人間の普遍的な仕組みです。けれど、人は、脳の一部の機能しか使っていなくても、それであたかも全てが使われているかのごとく生きてしまっています。そして、その中で全てを解決しようとしまいがちなのです。けれど、それではもったいないと思います。そこで、私が伝えたいのは、さらに別の脳の使い方です。

心のための「ライフスキル」という、新しい脳の使い方を身につけるために一番大切なのは、まず素直になることです。これまでと同じ脳の使い方、つまり、認知の脳だけで理解しようとすると、「ライフスキル」的な脳の使い方や「フロー」といった本質に、触れたり理解したりすることは難しいでしょう。

本質は、「質」という量ではない部分を満たす人間としての普遍の脳の仕組み。

「なぜこの心臓が動くのか」と考えなくても、脳は自然に我々の生命のために、心臓を絶えず動かしています。どうやって心臓が動かされているかなんて、知らないですよね。これと同様に、「ライフスキル」という脳の使い方を身につけるためには、まずは「心を大切にし、ライフスキルを磨いていこう」と考えてみます。このときに「心をどうやって大切にするのか知らない」などと理屈を考えたり言ったりするのではなく、ただ「心を大切にしよう」と考えるだけでいいのです。

人間の脳はとても素晴らしい。だから、脳を磨いて、「質」と「量」とを両方高めて、ライフスキルが働く人生を歩むことの価値を私は皆さんに訴えたいと考えています。

ライフスキルと認知は共存してずっと続いていきます。「今に生きる」と考えて気分が良くなったらそれでいいのです。それが「質」というものに多大なる貢献をしたことになるのです。そして、これは自分自身に感じる価値でもあります。

もし、「なぜライフスキルを磨いているのですか?」と問われたら、私は「生きるということに必要だから」と答えるでしょう。それは決して理屈ではないのです。

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医師プロフィール

辻 秀一  スポーツドクター

エミネクロスメディカルクリニック
1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学で内科研修を積む。同大スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学び、1986年、QOL向上のための活動実践の場としてエミネクロスメディカルセンター(現:(株)エミネクロス)を設立。1991年NPO法人エミネクロス・スポ-ツワールドを設立、代表理事に就任。2012年一般社団法人カルティベイティブ・スポーツクラブを設立。2013年より日本バスケットボール協会が立ち上げた新リーグNBDLのチーム、東京エクセレンスの代表をつとめる。日本体育協会公認スポーツドクター、日本医師会公認スポーツドクター、日本医師会認定産業医

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