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INTERVIEW

一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院

消化器内科医

西野 徳之

全ては患者さんのため、地域のためになる事を

東日本大震災から3年が経った今も、医師不足が問題視されている東北地方。
「特に原発の風評被害による福島県の医師不足は深刻です。平成24年医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、本県の医療施設に従事する医師数は、178.7人/10万人で全国第44位となっています(全国第1位は京都府で296.7人/10万人となっています。)。全国平均の226.5人/10万人(平成24年12月31日現在)に達するまで、約938人の医師の方が必要となります。」(https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045g/iryougenjyou.html「福島県の医療の現状」より引用)
福島で働く医師の負担は計り知れないですが、その中でも福島に若い医師が来てもらえるよう活動を続けている先生がいます。福島県郡山市にある総合南東北病院消化器センター長の西野 徳之先生です。 現在も忙しい日々の中、研修医の教育に力を入れ、様々な場所に赴き福島の現状を伝える西野先生にお話を伺いました。

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福島の現状

先生の勤務先は福島県郡山市にある総合南東北病院。震災から3年がたちましたが、現在の状態はいかがですか。

忙しい日々は続いています。私が所属する総合南東北病院は、新規のがんの患者さんが年間約2000名来られます。また、周囲の市町村から救急受け入れ態勢を取っています。東北は、震災前から医師不足は言われていました。
例えば、私がセンター長を務める消化器内科は、診療規模や対象の患者数からすると常勤医が20名位いてもおかしくない状態ですが、震災前の時点で常勤医が9名、震災後はなんと3名にまでなりました。77歳の院長、7年目の先生とそして私です。 現在はもう1名増え、内視鏡の出張は他の病院からお手伝いに来ていただけるようになりましたが、救急、入院は7年目の先生と2人で対応しているので、全く足りない状況です。

私の生活で言うと、朝5:30に起き、20-21:00頃に仕事が終わります。食事は帰宅後の一日一食で、昼食と言えば缶コーヒーくらいです。 忙しくて食べる時間もないと言うこともありますが、検査などは集中しないといけないので、集中力を高める意味でもあえて食べ過ぎないようにしています。
また、「病院の中は走らないように」と言われますが、病院の建物が広いために、端から端まで歩くにも5分はかかるので、移動は小走りにしながら、毎日診察を行っています。 患者さんの数も増えていて、こちらの病院に赴任した2000年の頃は、病院全体の医師数は50人弱でしたが現在では140人になりましたが、まだまだ足りない状況が続いています。上部内視鏡の症例は年間3000件位だったのが、今や12000件程です。

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なぜそんなに患者数が多いのでしょうか。

総合南東北病院がある郡山市周辺の市には、設備が揃っていて救急対応をしている総合病院が他にないのです。郡山市の人口は33万人ですが、周辺の市の人口を合わせると80万人以上になります。その人たちのライフラインになっているのが、この総合南東北病院なのです。

通常30万人以上の地域であれば、消化器内科は症例数も多いだけに50名位は常勤医がいそうなものですが、実際郡山市には当院以外の常勤医を合わせても10名いないのです。

非常に厳しい状況ですが、だからと言って「やめる」と言う訳にはいきません。私たちは‘通常’の病院の医師の2倍以上は働いているのではないかと思います。でも、私たちが郡山市とその周辺の市の人たちの最後の砦なので、「私がやらなければ誰がやる!」という思いで働いています。

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PROFILE

西野 徳之

一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院

西野 徳之

医師。1987年自治医科大学卒業後、旭川医科大学第三内科を経て、利尻島国保中央病院などで地域医療に従事。2000年10月より一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院(福島県郡山市)勤務。2007年より消化器センター長。医師不足の地で診療に邁進しながら、研修医指導にも情熱を傾けている。苦痛のない内視鏡をyoutubeで紹介している。『Oriented Endoscopy- -』http://www.youtube.com/watch?v=eYg8qkB-H2I 著書に「良医となるための100の道標 ―研修医諸君! 本音で「医道」を語ろうー」日経BP社、「ココまで読める! 実践腹部単純X線診断」中外医学社などがある。

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