喘息とは?
すばり喘息とはどのような病気ですか?
喘息は、正式には「気管支喘息」と言います。気管支に炎症が起きることで、空気の通り道が狭くなってしまったり、塞がってしまったりする病気です。
喘息が起こる原因は、ダニやハウスダスト、花粉と言ったアレルギー物質以外に、たばこの煙や冷たい空気などの刺激などもあります。そう言ったちょっとした刺激で気道が狭くなって息苦しくなったりします。
かつては子供の病気だと思われていましたが、現在は成人してから、アレルギー物質を原因としない喘息にかかる方も増えています。
「息が吐けなくなった時が息切れ~気管支喘息や肺気腫は1秒率を検査~」(日経BPネット)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20140919/416317/?rt=nocnt
喘息になりやすい人はいますか?
ハウスダストにアレルギーがある人は、発症しやすいと言われています。遺伝的な観点としては、親の片方にこのアレルギーがあれば発症のリスクは高くなります。両親ともにあった場合には、高確率で喘息を発症する可能性があります。また風邪を原因とした気管支炎や、ストレスを原因として発症することもあります。つまり、特別な人ではなく、誰もがなる可能性がある病気なのです。
喘息と言うと、多くの人はせきが続く症状や呼吸音がゼイゼイと苦しいというイメージを持っていますが、主だった症状が現れないけれど、呼吸が苦しいとおっしゃる患者さんも多くいます。そのため、診断は慎重に行わなければなりません。
「子供の病気と思われがちなぜんそく 実は圧倒的に成人が多い」(NEWSポストセブン)http://www.news-postseven.com/archives/20140917_275683.html
喘息は治りますか?
喘息は基本的に完治のない病気と言われています。しかし、治療の結果、喘息薬をほとんど使わなくていい状態まで持っていくことができるケースは多くあります。発作で亡くなる方が多かった時代に比べると、20年ほど前から優れた吸入ステロイドが出てきたおかげで、状況がガラリと変わりました。入院される患者さんも劇的に減っています。
ステロイドは怖いという印象を持たれる方も多いと思いますが、現在処方されている吸入薬は全身的な副作用はないと言われていますし、気管支粘膜の正常化が望めます。むしろ薬を使わないことで、リモデリングといって気管支の炎症が続き、気管が硬くなってしまい、薬が効かなくなることのほうが怖い状況です。
昔は発作が起きた時だけ気管支拡張剤を使うという指導がされていましたが、最近では医師の指導のもと毎日吸入するようにと変わってきています。ステロイドは炎症を起こさせない働きがあり、吸入薬は基本的に妊娠中の方も問題なく使える処方になっています。
「年間1700人が死亡…気管支喘息のさまざまな治療法」(週間朝日)
http://dot.asahi.com/wa/2014082700102.html
喘息の患者さんに鼻の治療を
先生のクリニックではどのような治療をされるのですか
私たちのクリニックでの喘息治療は、主に鼻の炎症の治療と、金コロイド治療と言うものがあります。CTを始めとする詳細な検査をした後、その患者さんに合う治療法を採用しています。
喘息の治療で、なぜ鼻を治療するのでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、実は多くの喘息患者さんがアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎といった鼻の炎症を起こしているんです。それを治療する事で、喘息の症状が改善します。
「アレルギー性鼻炎と喘息」(キョーリン製薬)
http://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/journal/upload_docs/120856A-1-31.pdf
ただ、残念なことにまだ耳鼻科と呼吸器内科の連携がうまく取れていない現状があります。耳鼻科の内診所見では「軽い副鼻腔炎で問題なし」と言われた後、私のクリニックでCTを撮り直したら手術の必要があるほど重い炎症を持っていた患者さんもいました。
また、小児喘息の場合は、子供が呼吸に関する検査の意味を理解して正確に行うことが難しいため、まずは鼻治療を行うこととなります。診ている限りでは、子供のほうが大人よりも圧倒的に鼻が悪いことが多いですね。
鼻の治療をするようになったのは、子供の頃に発作を起こすと、父がいつも点鼻薬を一緒にくれていたのを思い出したからです。祖父の時代のカルテにも、喘息患者さんに鼻の薬を処方しています。ふたりは文字には残さなかったけれど知っていたのでしょうね。鼻の治療を行うようになってから、患者さんの症状がみちがえて良くなり驚きました。
江戸時代から十七代続く、医師の家系。だからこそ出来ること
鼻の治療以外に行っている喘息治療はありますか
「金コロイド療法」という治療も行っています。元々金は結核の治療に用いられていましたが、1930年代から喘息治療に著しい効果があると確認されました。日本では祖父の杉原仁彦によって推奨され一般化したものです。
これは金を溶かした溶液を約1年間、1週間毎に注射するという治療です。この治療は保険外診療となり、合計で約2万円かかります。副作用としては1%以下ではありますが薬剤肺炎を発症するリスクが伴うものの、78%もの有効率があります。
保険適応から外されたということもあり取り扱い病院が減り、現在日本では仁友クリニックで治療を行うのみとなりました。今ではこの治療法を知る医師は少なくなっています。しかしながら、先ほどの通り高い有効率があります。私自身、クリニックに戻ってきた時に「なんて大きな効果のある治療なんだ!」と感動しました。ただ、使用する場合には、副作用の問題があるので開始前に詳細な検査を行い、慎重に判断します。また投薬中にも、こまめに来院してもらう事で患者さんの状態を確認しています。
「金コロイド注射について」(仁友クリニック)
http://jinyu.or.jp/inject/
「気管支喘息に対する金製剤の使用例」(医薬品情報21)
http://www.drugsinfo.jp/2007/12/31-001557
Q:治療期間はどれくらいかかりますか?
週に1回の注射を約1年間行います。
Q:副作用等の心配はありませんか?
一般的な薬の副作用である肝障害、腎障害や発疹などの可能性はあります。
また発生頻度は低いのですが薬剤性肺炎もあります。このような副作用の確認の為に10回ごとに検査を行い、副作用が出現した場合は中断いたします。
Q:費用はどれくらいかかりますか?
金コロイド療法の費用ですが、最初の10回が1回630円、11~20回が650円、21回~54回が1回1300円です。薬の濃度を上げていくのでこの金額になり、合計の治療費は2万円強ですが、現在は保険適応から外れておりますので自費診療となります。(http://jinyu.or.jp/inject/ 仁友クリニックより)
実家は代々続く医師の家系で、江戸時代から数えると自分が十七代目にあたります。喘息に特化して50年以上経つクリニックだからこそできる事があると思っています。
今後の喘息治療における課題はどのようなことでしょうか
ハウスダストに対するアレルギーに関して、薄めたアレルゲン抽出エキスを注射していく「減感作療法」が一般化すると、喘息を発症する患者さんが減るのではないかと思っています。
それ以外に、耳鼻科と呼吸器科の連携も当面の課題ですね。大学病院などで副鼻腔のCTを撮ってくれるところも増えてきましたが、一般化するにはまだこれからです。
今喘息で辛い思いをされている方は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がないか診察を受けてみる事をおすすめします。
「『アレルゲン免疫(減感作)療法』の基本的考え方」(日本アレルギー学会)http://www.jsaweb.jp/modules/about/index.php?content_id=81