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INTERVIEW

福井大学医学部地域プライマリケア講座 講師

内科・家庭医

井階 友貴(いかい ともき)

住民・行政・医療の協働で地域医療をつくる

 地方の医師不足が問題となっている中、大学を中心に、町と住民が一体となってその解消に取り組んでいる福井県高浜町。2008年には、町内に13人いた常勤医が5人にまで減ってしまいましたが、2014年には11人まで回復させました。高浜町の医療を守り育てる取り組みを中心となって進めているのは、住民や行政の方からも「いか☆やん」と呼ばれ、親しまれている井階友貴先生です。

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医学教育と住民啓発でなかまを作る

先生の現在の活動を教えてください。

福井県の最西端に位置する人口約1万800人の高浜町で、「福井大学地域プライマリケア講座」を開いています。高浜町は他の地域と同様に、家庭医療に特化した医師の不足や、住民の地域医療に対する理解不足に悩まされてきました。そこで、地域医療教育の推進と、住民・行政・医療が協働できるシステムづくりに取り組んでいます。

 地域医療教育としては、「地域の医師は、地域が育て、地域が守る」をテーマに、町内の医療・福祉事業所などと連携して、地域そのものを体験できる研修プログラムを開催しています。2014年度は、学生79名、初期研修医50名、後期研修医2名の計131名が高浜町のプログラムに参加してくれました。中でも「夏だ! 海と地域医療体験ツアーin高浜」には、全国から多くの医学生、研修医が集まりました。

 プログラムの参加者が増加しているのは、これらの研修を通じて地域の生活を感じ取り、地域医療の楽しさを知ることができるからだと思います。高浜町内で臨床研修を受ける研修医や、後期研修修了後に町内で勤務を継続する人も出てきていて、成果も着実にあがっています。

 住民・行政・医療の協働システムづくりにおいては、地域医療の中心は住民であると考えて、住民活動を積極的に支援しています。当初は私自身が住民への啓発を行っていましたが、医師という立場からの呼びかけには全く反響がなく、限界を感じました。住民が住民に呼びかけることの重要性を実感しましたね。

 以前勤めていた兵庫県立柏原病院では、地域のお母さんたちが「小児科を守る会」を立ち上げ、積極的に活動していました。そのことを思い出し、高浜町でもそのようなサポーターの会を作りたいと思ったのです。2009年7月に開かれた第1回高浜町地域医療フォーラムで、住民参加型の主体的な活動について話をして声をかけたところ、15名の方が集まってくださり「たかはま地域医療サポーターの会」が立ち上がりました。

 主婦やサラリーマン、自営業の方、患者さんのご家族など、医療に関わったことのない方から、看護師やケアマネージャーなどの医療・介護関係者まで、さまざまな方がこのサポーターの会に参加しています。活動方針は、住民自身が地域の主役として地域医療のためにできる事を考え実行すること、住民・行政・医療の架け橋を担うことです。

 サポーターの会の活動を開始して6年が経過しましたが、ここまで続けてこられたのは、「無理しない」「批判しない」「あきらめない」を活動3原則にしていることが大きいと思います。会に入ったら必ず出席しなければならないというような精神的負担がメンバーにかかると、長続きしません。旅行のように出かけたり、飲み会を開いたり、楽しみを感じられる活動もしていますし、医学教育とのコラボで研修医の先生にプチ健康講話をしてもらい、医療の情報も伝えています。ここに参加すれば楽しくて情報も得られるというところが、長続きしている秘訣です。

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PROFILE

井階 友貴(いかい ともき)

福井大学医学部地域プライマリケア講座 講師

井階 友貴(いかい ともき)

2005年滋賀医科大学卒業後、研修医として滋賀県の済生会病院に勤務。2007年兵庫県立柏原病院で地域医療崩壊の現状を知る。2008年より高浜町和田診療所に勤務。2009年より福井大学医学部地域プライマリケア講座に所属。住民・行政・医療が一体となった地域医療を追求し、医学教育や住民啓発に奮闘中。日本内科学会認定医、日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医、日本在宅医学会認定在宅医療専門医・指導医

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