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INTERVIEW

JA秋田厚生連由利組合総合病院

糖尿病代謝内科

谷合 久憲

家族も住む由利本荘市に貢献する

東京都出身で社会人経験を経た後に医師となり、現在は秋田県由利本荘市で糖尿病代謝内科医として勤務している谷合久憲先生。谷合先生は病院での外来のみならず、在宅診療や「NPO法人由利本荘にかほ市民の健康を守る会」での摂食嚥下ケアの講習会、町おこしなどさまざまなことに関わっています。ジャンルを問わず精力的に活動している背景を伺いました。

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由利本荘市のなんでも屋

―現在は、どのようなことに取り組まれているのですか?

現在は、秋田県由利本荘市のJA秋田厚生連由利組合総合病院で、糖尿病患者の外来をメインに受け持っています。糖尿病患者の透析治療や、無症候性冠動脈狭窄をカテーテルで治療するのが主な治療です。その他に、認知症外来や在宅診療も担当しています。ICUの患者からお看取りまで、つまり急性期から終末期まで関わることができています。

どんな仕事でも自分の身になると思っているので、舞い込んできた仕事は一切断りません。そんな信念を持っていたからこそ、今在宅診療で専門外の患者さんでも診られる技術が身に着いたと思っています。また、認知症ケア加算が新しく導入されることを受けて、院内でのチームリーダーという大役も任されるようになりました。

―取り組みの1つで、摂食嚥下ケアについて力を入れていると伺いました。

嚥下機能が低下して誤嚥性肺炎を起こすと、自宅で最期を迎えたいと思っている方も入院になって今います。反対に、入院患者が最期は自宅に帰りたいという場合は、「食べられる」ようにならないと退院できません。小山珠美先生の摂食嚥下ケアの技術を知り惚れ込んで、自分で勉強しながら入院、在宅問わず患者さんのケアに取り入れていました。

結果的に在宅で看取れる患者さんが増えましたし、入院日数も大幅に減りました。入院日数が減ったことで病院の経営にも貢献できています。当院の平均在院日数が15日程ですが、私の科では9日を切っています。病院滞在期間が6日短くADLが落ちる前に退院できますから、患者さんは寝たきりになりません。また、昨年度は胃ろうを1例も作っていません。

―メンバーとして参加されている「NPO法人由利本荘にかほ市民の健康を守る会」でも、積極的に摂食嚥下ケアの講習会を行っていますよね?

いくら私が入院している患者さんに摂食嚥下の機能維持に取り組んでも、患者さんが自宅に帰られてから家族や訪問看護師やヘルパーさんが安全な食事管理をできないと、効果を発揮できません。そこで秋田県で摂食嚥下ケアのセミナーを始めたのです。

最初は、専門職向けにしようと思っていましたが、もはや専門職だけではカバーしきれません。というのも、人口減少に伴って専門職の方も首都圏へ転職されてしまうんですよね。由利本荘市は人口8万人ですが、2015年3月だけで300名転出されました。このように人口減少が進む街で専門職だけに頼っていては、医療介護が回らなくなると思い、一般市民にも門戸を広げたセミナーにしています。

あと当法人では、「町おこし」も任されています。昨年夏に開催した「浴衣まつり」に2000人程の人を呼ぶことができたので、1回限りで終わりにしようと思っていましたが、周囲からの反響があり2016年も開催しました。私たちは主にその祭りの中で、血糖値検査や要介護スクリーニングテストを実施しています。冬には「裸まいり」、春には家の外にお雛様を飾って来た人に見せる「ひな街道」という伝統があるので、文化的意味で継承していきたいと思い、大手企業から予算を出してもらって開催しています。

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PROFILE

谷合 久憲

JA秋田厚生連由利組合総合病院

谷合 久憲

東京都出身。社会人経験の後日本医科大学卒業。千葉県にて初期研修、岩手県にて後期研修を修了。秋田県由利本荘市にある本荘第一病院に勤めた後、2015年4月よりJA秋田厚生連由利組合総合病院に勤務、現在に至る。その傍ら2014年よりNPO法人由利本荘にかほ市民の健康を守る会」のメンバーとして、摂食嚥下ケアの講習会や東日本大震災で避難してきた900名の方の支援、大学生の社会参画と障がい者の就労支援を目的としたイベントの運営など、多岐にわたる活動に関わっている。

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