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INTERVIEW

ながたクリニック

頭頸部外科・耳鼻咽喉科・感染症・アレルギー疾患・外傷・プライマリー

永田 理希

No Border!誰もが楽しく学べる場に

石川県加賀市に「ながたクリニック」を開設している永田理希先生。頭頸部外科・耳鼻咽頭科を専攻科としつつ、感染症・アレルギー疾患・外傷・生活習慣病などプライマリー小児科・内科・外科の幅広い領域の診療をしています。同時に、誰もが感染症を自由に楽しく学べる場を提供するために、2006年に「感染症倶楽部」という感染症予備校を立ち上げました。
現在では、テーマを絞って短時間で学べる「感染症QUBE」やSNSでいつでもどこでも学べる「感染症倶楽部 on line(ICOL:アイコール)」、おもてなしプレゼン大会「天下一武道会」など、さまざまなシリーズを展開。学びの場・機会を広げています。永田先生は、なぜ感染症を教えようと思ったのか−−。そして、今後どんな世界を実現したいのかを伺いました。

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誰もが楽しく学べる場を提供したい

―まず「ながたクリニック」について教えてください。

「ながたクリニック」は2008年、石川県加賀市山代温泉に開設しました。当初は耳鼻咽喉科・頭頸部外科の標榜のみとしていましたが、もともと感染症や喘息などのアレルギー疾患、ケガ・ヤケド、動物咬傷、生活習慣病などの幅広く診療しており、近くで消化器外科・内科として父の永田医院と合併したことを機に小児科・内科(感染症&アレルギー疾患)、頭頸部外科(腫瘍&がん)、外科(外傷&感染症)を標榜し、幅広い疾患に乳幼児から90歳代の超高齢者ま対応しています。

基本的に余計な検査や薬は使用せず、臨床推論などをもとに「見極める」ことが医師の仕事とのモットーで、「説明処方箋0円」を必ず処方することを心掛けています。繁忙期は昼休みなしで21~22時ぐらいまで診療がかかってしまうこともあります。

―クリニックと並行して運営している「感染症倶楽部」とは、どういうものですか?

感染症は全科にわたって関係してくる疾患なので、どんな専攻科医や職種においても正しい知識を持っている必要があります。しかしながら日本では、感染症の知識やスキルなどの教育を受ける機会がまだまだ少ないのが現状です。

そこで、地域、職種、病院規模、経験年数などに関係なく、誰もが感染症の難しいことをわかりやすく楽しく学べる「場」を提供するために立ち上げたのが「感染症倶楽部」という感染症予備校です。

私が講師となってテーマごとに70分×4コマ=280分のレクチャーを、1年で全5~6回開催しています。2006年にスタートし、今では石川、富山、福井の北陸3県を中心に関東や関西など全国から多様な職種の方々に参加していただいています。最初は60~90分×1~2コマ程度だったのですが、受講者の要望からを組み込んでいった結果、1人で1日70分×4コマ=280分のレクチャーをする形になってしまいました。毎回、終わるとかなりフラフラになっています(笑)。

感染症倶楽部では次の2点にこだわっています。

感染症の知識があまりない初学者にも興味を持ち身近に感じてもらえるように、図表を作成したりキャラクターやBGM、効果音などを用いたりして、飽きずに楽しめるように工夫している点。そして論文や国内外のガイドラインなどから引用した知識だけでなく、その背景や実際の臨床の現場での実感や対応策など、翌日からいかせるリアルな内容をレクチャーに盛り込んでいる点です。

毎回60〜100名の方にご参加いただき、これまでに多いときには200名以上の参加もありました。

―「感染症倶楽部」以外にも活動されていると聞いていますが――?

学びの最初の一歩や独学でつまずいてしまった方を対象にした勉強会とはいえ、「感染症倶楽部」の280分もの長時間の講義を年間と通して参加し続けるのは、高いモチベーションだけでなく、距離的問題、仕事や家庭などの時間的制約など、難しい点があります。そこでより学びのハードルをなくしていくために、さまざまな企画を考え、実行しています。     

2012年から遠方だったり日々の仕事が多忙で勉強会になかなか参加できなかったりする方、また、産休・育休で現場から離れている方が、いつでもどこでも感染症を学び質問できるように、Facebookに「感染症倶楽部 on line(ICOL:アイコール)」というグループを開設しました。

現在3000名以上が登録され、感染症をスペシャリティやサブスペシャリティとされる多くの先生とも「学び」を通してつながるようになっています。少しずつ学びの裾野が広がり医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、看護師、救急隊員、研修医、医療系学生など、参加する「予備校生」は多種にわたります。

また、2013年からは毎年7月上旬に、地元・加賀市山代温泉の温泉旅館で、感染症領域に関するプレゼン大会「天下一武道会」も開演しています。参加者は、医学生・研修医から薬剤師、看護師、検査技師、感染症専門医、臓器別専門医、歯科医師、獣医師、開業医、著名な先生に至るまで、さまざま。旅館支配人の協力のもと、聴講のみの参加、日帰り参加、家族連れ参加なども可能で、気軽に参加できるお祭りイベントとなっています。

プレゼン大会前後には、北陸の美味しいお食事・お酒、温泉を楽しみながら、フランクな雰囲気で交流が図れるので、全国で頑張っておられる多くの先生方や著名な先生から直接アドバイスをもらえたり、この機会でしか得られない経験を数多くされたりしています。

そして、頑張っている人の話を聞いて刺激を受ける人や、所属施設で孤軍奮闘しており迷いと葛藤のあった人が、自分のやっていることに確信を得て、明日も頑張ろうと勇気をもらえた人など、たくさんの人にとってやる気が起こる場所になっているようです。

さらに、2017年6月から1日280分も学ぶほどの気力や時間もないと思っている人たちでも、気軽に学び、その後のアクションを変えるきっかけになればと思い始めたのがショートレクチャー「感染症QUBE」。テーマを絞り1回30分のショートレクチャーを開催しています。感染制御・抗菌薬適正指導顧問医をしている加賀市医療センターが研修医指定病院になったことをきっかけに、2019年5月からは毎週水曜日に「IC-FORCE:感染症倶楽部 for 臨床研修医」と称し、60分のモーニングレクチャーを行い、研修の2年間で感染症だけで100時間学べる環境としています。   

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PROFILE

永田 理希

ながたクリニック

永田 理希

医療法人社団希惺会ながたクリニック院長/感染症倶楽部シリーズ統括代表/加賀市医療センター感染制御・抗菌薬適正指導顧問医
石川県出身、1999年東邦大学医学部卒業。金沢大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科入局。厚生連高岡病院(富山県高岡市)、中村記念病院(富山県氷見市)、富山労災病院(富山県魚津市)を経て、2006年から福井県済生会病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科医長として勤務。2008年ながたクリニックを開業。
2006年頃より「感染症倶楽部」シリーズを主催。レクチャー内容を「感染症倶楽部 on BOOK(ICOB)」として順次書籍化している。2008年いつでもどこでも感染症を学べる場として、Facebookを利用した「感染症倶楽部 on line(ICOL)を開設。現在、3000名以上登録。2014年に加賀市医療センター 感染制御・抗菌薬適正指導顧問医就任。地域後方支援病院での重症感染症診療や医師・看護師・薬剤師、検査技師、研修医、医学生への「入院感染症入門塾」、2018年より石川県内で保険診療をしている医師・歯科医師を対象にした「外来感染症入門塾」を定期的に開催。2019年よりIC-FORCE:感染症倶楽部 for 臨床研修医」を毎週開催。

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