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介護業界は楽しい!真の多職種連携キーワードは“Dive”すること

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若手家庭医である田中公孝先生は、医療界が閉塞的なことや介護業界のさまざまな問題点が改善されないと、今後の高齢化社会を支えきれないという問題意識を持っていました。この二つの問題意識と偶然が重なって、介護業界のリーダーを育てるコミュニティ「HEISEI KAIGO LEADERS」に関わるようになった田中先生。医師として介護業界の方と関わる中で見えてきたものとは?

 私は現在、家庭医として診療に従事する傍ら、介護業界のリーダーを育てるコミュニティ「HEISEI KAIGO LEADERS」が主催する介護系イベント「PRESENT」に、ファシリテーターとして関わっています。「多職種連携」という言葉をよく耳にしますが、イベント運営に関わる中で多職種連携に重要なことは“Dive”、つまり相手のフィールドに飛び込むことではないかと思うようになりました。今回は、介護業界の魅力についてお伝えすることで、ぜひ1人でも多くの方に介護業界に興味を持って飛び込んでもらえたらなと思います。

◆介護業界に“Dive”したきっかけ

 きっかけは、本当に偶然です。もともと認知症に関心があり、様々な取り組みがあることをインターネットで知って、認知症フレンドリージャパンイニシアチブ(DEJI)という団体のイベントに参加しました。そこで知り合いに声をかけられ、話の中で「こういう活動に興味があるなら、HEISEI KAIGO LEADERSって面白い団体がありますよ」と誘われたのがはじまりです。以前から介護業界がよくならないと高齢者を支えきれないという問題意識はありましたが、そこに偶然の誘いが重なって、介護業界に足を踏み入れることになりました。

◆魅力その1:介護業界の「多様性」

 HEISEI KAIGO LEADERSで活動していくうちに気づいた介護業界の魅力は、あふれる多様性です。訪問介護、施設介護、訪問看護、訪問リハビリ、訪問入浴など王道のものから、最近だと訪問美容、介護道化師(ケアクラウン)、音楽療法をされている方もいます。ソニー・イオン・ローソンと他業界でも活躍するような大手企業が参入していますし、NPO法人をはじめとする多くの団体も関わっています。

このように、今まで参入していなかった分野・企業が次々と入ってきて地位を確立しているのは医療と違うところで、自然と他業界のノウハウが入ってきます。他業界のノウハウが入れる余地があるのは、色々知りたがりな自分にとってうらやましい環境です。

 また、所属しているHEISEI KAIGO LEADERSも、個性あふれるメンバーが関わっていて、介護士、医師、看護師、金融、人材、ITなど職種もさまざまです。そして大学生との関わりもありますが、彼らは福祉系学部だけでなく、文学部や経営学部などの学生もいるのです。医療界では医学部、看護学部、薬学部・・・といった具合で、志向性や考え方が似ているので一緒にいて心地はいいです。しかし、自分と全く違う道を歩んできた人と関わることは世界観を広げますし、やはり違う世界観を知り新しい気付きを得ることは大事だと思います。

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◆魅力その2:介護業界で活躍するイノベーターの存在

 尊敬するイノベーターが多いことも特徴です。PRESENTでお呼びした株式会社あおいけあ 加藤忠相さんが展開する「藤沢型コミュニティケア」。講演でお話頂いた地域住民を巻き込み、認知症の方のストレングス(強み)を生かしたケアは、まさに介護の専門性がなせる業だと思いました。最近地域づくりに興味を持つ医療従事者が増えている実感があります。加藤さんのお話は、全員参加型の地域づくりのノウハウと多くのヒントが学べるので、ぜひ一度医療業界の方にも聞いてもらいたいと思います。

社会福祉法人福祉楽団 飯田大輔さんの「恋する豚研究所」は、障害者の方々と共に養豚場を営み販売する取り組みで、地域の産業を生かした新しい福祉の形です。今度PRESENT_06でお呼びする、社会福祉法人佛子園 雄谷良成さんの「Share金沢」は、高齢者だけでなく、学生、障害をも子どもたちがごちゃまぜに、共に支え合って暮らすコミュニティで、日本版CCRCの成功モデルとして注目を集めています。介護業界の枠では語れない取り組みをされている方ばかりですが、こういったイノベーターたちの信念や課題解決に取り組む姿勢に触れることは、自分が今後どう社会に向き合い、活動していきたいかを考える良い機会になります。


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株式会社あおいけあ 加藤忠相さん

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社会福祉法人福祉楽団 飯田大輔さん

 

◆魅力その3:介護業界は大きな成長産業

 ご存知の通り、これから日本の高齢化はますます加速していきます。それに対応するためのサービスや人材確保が求められ、ますます大変な世の中になるのではないかと危機感が募ります。

一方でこの大変な状況は、新たな産業が生まれるきっかけにもなっています。以前参加した「国際福祉機器展」では、福祉車両・福祉用具・福祉ロボット・嚥下食・口腔ケア製品など様々な企業展示が目一杯、東京ビッグサイトの会場に敷き詰められていました。他の展示イベントも参加しましたが、活気があふれており、介護業界は成長産業であることを実感しました。

 ここまで聞いていかがでしょうか?私も介護業界に関わるまでは大変だというイメージしかなかったですし、はじめは飛び込むことも躊躇もしました。しかし今では介護業界に飛び込んで本当によかったと思っています。関われば関わるほど自分の知らない世界や価値観に出会えますし、自分の診療では、こうした介護業界の知見を踏まえて介護職と相談ができるようになりました。

 高齢者の生活を医療・介護で支えるということは、その方を取り巻く複雑な関係性を見極め、解いていく力が求められます。この力を養うためには、現在の高齢者を取り巻く環境を知り、多角的な視点を学ぶことが必要です。多様な場に出向き、多くの職種と対話することで見えてくる世界があると私は考えます。皆さんも介護業界に“Dive”してみませんか?

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医師プロフィール

田中 公孝 家庭医

2009年滋賀医科大学医学部卒業。2011年滋賀医科大学医学部附属病院にて初期臨床研修修了。2015年医療福祉生協連家庭医療学開発センター (CFMD)の家庭医療後期研修修了後、引き続き家庭医として診療に従事。医療介護業界のソーシャルデザインを目指し、「HEISEI KAIGO LEARDERS」運営メンバーに参加。イベント企画、ファシリテーターとして活躍中。

田中 公孝
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