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総合診療医を志す若手医師の後押しをする

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医師5年目の近藤敬太先生は、出身地である愛知県豊田市で総合診療医を目指し後期研修中です。同時に、同世代で総合診療医や家庭医を志す医師のための「若手医師のための家庭医療学冬期セミナー」の代表を務められています。専攻医として、冬期セミナーの代表として、どのようなことを考え活動しているのでしょうか。

◆総合診療医として愛知県豊田市を良くする

―現在、総合診療科専攻医3年目の近藤敬太先生。総合診療医を志した理由を教えていただけますか?

実は、初期研修2年目までは、研修先のトヨタ記念病院の先生に憧れて循環器内科医になろうと思っていました。総合診療医になることはあまり考えていなかったんです。

ただ、実家が老人保健施設を運営していることや、小学生の時には、祖父母のお世話や介護を積極的に関わっていたものの、高校に進学する頃に疎遠になってしまい、最期まで関わることができなかったことに対して、ずっと罪悪感のようなものを感じていました。そのため、将来的には祖父母のようなお年寄りに寄り添える地域医療に携わりたいと思っていました。

しかし、訪問診療や総合診療など、多様な疾患を総合的に診る医療に携わるのは、若い頃に急性期の現場でトレーニングを積み、臓器別の専門性を極めてからなのではないかと、個人的には考えていました。

―そこからなぜ医師3年目で総合診療科に進まれたのですか?

豊田地域医療センターに見学に行った時、今の上司である大杉泰弘先生に出会ったことで、考えを改めさせられました。それが大きな転機でしたね。

大杉先生は、私が初期研修医2年目になるときに豊田地域医療センターに赴任されて、総合診療科を立ち上げられていました。見学に行った時に大杉先生から、総合診療にも、ものすごく専門性があること、他の診療科で専門性を磨けば誰でもできるものではないということを教えられました。

もともと将来的には総合診療に携わりたいと考えていたことや、ウィリアムオスラーに憧れていて、病気だけではなく、全人的に患者さんを人として診たいという思いもあったように思います。

初期研修先のトヨタ記念病院は、循環器内科の優秀な先生方がいらっしゃいましたし、その他の診療科の先生方もレベルの高い医療を楽しそうにされていて、すごく地域に貢献している病院です。そのような環境で自分も豊田市のために働きたいという思いや、循環器内科に対する思いもあって悩みましたが、最終的には総合診療科に進むことを決意しました。結果的に、現在でもトヨタ記念病院で診療させていただくこともありますし、総合診療科を選択してとても良かったなと思っています。

特に在宅医療では多くの人生の最終段階の患者さんを担当させて頂き、人生の大切な選択を迫られる場面も多く経験しました。患者さんに寄り添い、今までの思いを振り返ることで、患者さんの人生を通じて医師としてだけでなく、人としても少しずつ成長を実感できるのが総合診療医の魅力ではないかと思います。

―来年以降は、どのようなキャリアを描いていますか?

わたしは、自分自身を育ててくれた豊田市のために医師として貢献したいと考えていて、豊田市をいつまでもいい医療が受けられる地域にしていきたいと思っています。そのために、豊田市を総合診療医を育てるフィールドにしていきたいですね。

市内には豊田地域医療センターだけでなく大小さまざまな医療機関があり、市外にも連携先として藤田医科大学病院があります。総合診療医を育てるにはさまざまなフィールドでの教育が必要不可欠であり、それぞれが相互に良い連携を取ることで、その環境が整ってきています。また以前は、在宅医療はあまり盛んな地域ではありませんでしたが、医師会の協力を得ながら大杉先生が豊田地域医療センターで在宅診療を始められて、今では患者数が350名以上、年間150名以上の方をご自宅でお看取りしています。

今後、さらに総合診療医を育てられる環境が整えば、総合診療を志す若い医師がどんどん豊田市にやってきます。もちろん、若手の医師はトレーニングが必要なので、短期間で見るとベテランの医師のほうが地域の方々によりよい医療を届けられるかもしれません。

しかし、豊田市で若い医師がトレーニングを受けることで、豊田市に残ってくれる医師が増えれば、医療体制の強化に繋がります。さらには、豊田市で学んだ総合診療医が全国へ巣立っていって、全国各地で、ここで学んだことを実践、広めてくれれば、それは豊田市のアピールだけでなく、日本全体の総合診療の底上げにもつながっていくはずです。

自分自身、まだまだ臨床能力を磨く必要があると思います。同時に、総合診療医には必ずしも病気の方だけではなく、「地域を診る」能力が求められます。公衆衛生を通じて愛知県豊田市の方々をいかに病気にならないようにするか、病気になったとしても不自由が少なく暮らしていくためにはどうすればいいかなど、「愛知県豊田市を診る」能力も求められるのです。

現在、豊田市と当プログラムが連携して、さまざまなプロジェクトを行っています。自分を含めた後期研修医が市のプロジェクトに参加し、「愛知県豊田市を診る」ためのスキルを磨いています。私自身は、海外での公衆衛生学修士などにも興味があるので、いずれはこういった能力を海外で学んで持ち帰り、後輩にも教えていけるようになりたいと考えています。

今年度は私の在籍する豊田地域医療センター総合診療プログラムに10名、来年度は7名の専攻医が入ってくれる予定です。自分たちの教育の質を上げ、環境を整備することで、今後は毎年10名、20名と若手の医師を受け入れられるような総合診療科にしていきたいですね。

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医師プロフィール

近藤 敬太  後期研修医

1990年生まれ、愛知県豊田市出身。2014年、愛知医科大学を卒業後、トヨタ記念病院にて初期研修修了、藤田医科大学 総合診療プログラム所属。後期研修にて藤田医科大学病院、トヨタ記念病院、聖路加国際病院などを経て現在は豊田地域医療センターにて後期研修中。

近藤  敬太
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