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INTERVIEW

トラストシニアクリニック・等々力 院長

老年医学

大蔵 暢

「老い」という部分にもっと光をあてたい!

「最近あんまり食事が食べられなくなった」「少し走っただけで息切れする」こんな風に思ったことはありませんか?それが30-40年後には、「最近固形物が食べられなくなった」「歩くとヨタヨタする」と言う風になるのをイメージできますか?『老い』―誰もが必ず経験する事なのに、この事ほど誰もきちんと理解していない事はありません。
その老いに対して、患者さんに寄り添い、様々な角度からアプローチする「老年医学」を専門とする、大蔵 暢先生にお話を伺いました。

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高齢者に起きている現実と老年医学

先生はなぜ高齢者専門のクリニックをされているんですか?

それは、子どもと成人の病気が違うように、成人(若年者)と高齢者の病気は全く違うからです。若年者は、体力もあり各臓器も若いので、不調を感じてもその部分だけ治療すれば、また元気になっていきます。多くの場合、健康か病気かのどちらかの状態に分類することができます。

しかし、高齢者は加齢に伴い全ての臓器が弱って、身体機能が低下しているので、一度どこかが悪くなると、全体にその影響が広がってしまいます。
例えば、加齢によって血管が硬くなって脆くなったり、肺活量が減ったり、骨密度が下がったりすることで、高血圧や、糖尿病・心臓病などにかかり易くなります。それ以外にも、認知症・老年期うつ・めまい・耳が聞こえにくい・転倒・目が見えにくいなどと言った高齢者特有の症状にもつながります。そうなる事で、健康でも病気でもない「虚弱状態」と呼ばれる高齢者が増えているのです。

それ以外にも、老いによる社会的・心理的ストレスが、高齢者をとても苦しめています。
白髪・しみ・しわなどと言った外見の変化に加え、一人でうまく歩けない、物忘れが激しい、トイレに行けない、などと言った、今まで出来ていた事が出来なくなる悲しさがあります。また周囲から、年寄り扱いされたり、虐待を受けたりすることもあります。それ以外にも定年退職による孤独感や、家族、友人の死など、高齢者の周りには、若年者が思っている以上に様々な事が起こっているのです。

それゆえ、どこか一ヶ所調子が悪いと言っても、高齢者の場合は問題が複雑に絡んでいるので、それに合った診察を行う必要があるのです。
チームカンファレンス

先生の専門である老年医学とは、どのようなものですか。

老年医学とは、様々な問題が複雑に絡み合っている高齢者に対して、症状が出ているところだけを診るのではなく、その人の人生観や家族背景など社会的な部分も含めて全てを診るというものです。

病院での治療と言えば、症状が出ている箇所、臓器に対してアプローチするのが一般的ですが、老年医学ではまず患者さんのお話を聞くところから始まります。
例えば「何となく調子が悪いので、色んな病院に行き、様々な薬を飲んでいるがすっきりしない」と言われてお話を伺っていると、実は飲んでいる薬の副作用で体調が改善していない場合などがあります。

診療

また、先ほどの通り、高齢者の症状には医学的な問題だけでなく社会的な問題も関連しているので、気持ちのストレスが身体に影響を及ぼしている場合もあります。「足が痛い」と言って来られた患者さんの診察をしていると、実は前日に娘さんとけんかをした事が原因だったりもするのです。

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PROFILE

大蔵 暢

トラストシニアクリニック・等々力 院長

大蔵 暢

1995年富山医科薬科大学(現富山大学)卒業。王子生協病院や聖路加国際病院での研修を経て、2001年に渡米。ミシガン大学で高齢者医療を学び、2009年に帰国。その後2014年6月よりトラストシニアクリニック・等々力院長就任。
日本認定内科医、米国内科専門医、米国老年医学専門医。
著作に「『老年症候群』の診察室」(朝日選書)。

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