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INTERVIEW

ささえるクリニック岩見沢

総合診療医

永森 克志

医療介護をワンパックで提供する

2007年に財政破綻した夕張市の医療再建を実行した立役者の一人、永森克志先生。地域包括ケアシステムに注目が集まる前から、それを実現し、多くの医師や介護関係者が訪れる地域をつくってきました。そんな永森先生が地域医療に従事するようになったのは、ひょんなことがきっかけでした。これまでのキャリアと、地域医療に対する想いをお話しいただきました。

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八ヶ岳が見える自然豊かな土地で医療がしたい

―永森先生が地域医療に興味を持ったのはなぜですか?

私が地域医療に興味を持ったのは、山梨県と長野県にまたがる八ヶ岳が眺められる地域で医療をしたいと思ったことがきっかけでした。

私は東京のど真ん中で育ち、東京慈恵会医科大学に入学。周りには大きなオフィスビルが立ち並び、行き交う人はサラリーマンばかりという環境で過ごしていました。そんな私が学生時代に八ヶ岳周辺へ遊びに行き、すっかりその絶景に魅了されてしまったのです。そして直感的に「この辺で往診しながら医療ができたら最高だな」と思いました。

地域医療のメッカである佐久総合病院を知ったのも、八ヶ岳周辺で医療がしたいと思ってからでした。卒業後、医局に入らず佐久総合病院で研修を受けましたが、採用面接の時に地域医療の草分けである若月俊一先生のことも知らず、面接官には「若月先生を知らずに面接を受けに来た学生は初めてだ」と怒られたほどでした。

今でこそ、多くの方に見学していただける地域医療のあり方の1つを展開できていますが、決して最初から自慢できるような大きな志があったわけではありませんでした。

―佐久総合病院での研修を修了されて、夕張市に赴任するまでのキャリアを教えていただけますか?

佐久総合病院では、人と人と自然との関係性の中に、おまけとして医療がくっついていることを、実感を持って学ばせてもらいました。ここでの経験は、今の活動の土台です。

ところが3年間の研修を終えた当時、「広く浅く診られる総合診療のスキルより、やはり専門性をしっかり身に付けたほうがいいかもしれない」と思うようになっていました。もちろん、プライマリケアのスキルは十分学ばせてもらいましたし、自然豊かな地域で医療ができることは、充実感につながっていました。しかし医師としてのキャリアを考えた時に、何も専門性を高めずに地域でのキャリアを積んでいくことが不安になってしまったのです。

結果、出身大学に戻り、皮膚科に入局することにしました。しかし東京に戻ってみると、やりたかった地域医療を続けなかったことに対する挫折感を、常に感じていました。もちろん皮膚科での経験は、地域医療で大いに役立っていますが、当時は事あるごとに後悔を感じていましたね。 

それで再び地域医療に従事しようと決意を固め、各地を見学していました。その1つが、村上智彦先生が医療再生を進めようとしていた夕張市だったのです。初めてお会いして話をするうちに意気投合、村上先生から「ぜひ夕張市に来てほしい」との手紙をいただき、赴任を決意しました。

―夕張市が財政破綻し、市立病院が閉鎖後の医療再建。先の見えないミッションだったと思いますが、躊躇はなかったのですか?

あまりなかったです。夕張市は日本の将来像です。その夕張市が今後どうなっていくのか、自分たちが関わることでどう変化していくかこの目で見ていきたいとの思いがありました。あと、村上先生に付いていきたいとも思ったのです。

周囲からは、佐久総合病院で研修を受けると決めたときより大反対されました。正直、先が全く見えず、3カ月でとん挫する可能性も十分にあったので、当然と言えば当然かもしれません。ただ妻が「あなたが行きたいなら一緒に行ってみよう。もし3カ月でとん挫したら、その後のことはその時に考えればいいよ」と言ってくれたのが支えになりましたね。

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PROFILE

永森 克志

ささえるクリニック岩見沢

永森 克志

医療法人社団ささえる医療研究所理事長 兼 ささえるクリニック岩見沢院長
2000年東京慈恵会医科大学卒業、佐久総合病院にて研修。その後、東京慈恵会医科大学皮膚科学講座入局。2007年より村上智彦先生と共に、北海道夕張市の旧夕張市立総合病院(現・夕張医療センター)の再建に乗り出す。2013年、岩見沢市に支えるクリニック岩見沢を開設、2014年医療法人社団ささえる医療研究所として法人化、「ささえるさん」の愛称で親しまれる。2017年4月にはコミュニティスペースを兼ね備えた訪問看護、訪問介護事業所「まるごとケアの家いわみざわ」、2018年1月にはシェアハウス・シェアオフィス・コミュニティスペースの機能を持つミックス住宅「ささえるさんの家」をスタートさせ、地域をささえる医療介護を展開する。

 

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