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INTERVIEW

TOWN訪問診療所

形成外科

木下 幹雄

「こんなに足病に悩む人がいるとは……」

形成外科医としてフットケアを専門に診てきた木下幹雄先生。2017年4月、東京都昭島市に日本初のフットケア専門の訪問診療所を開設しました。都内に位置する診療所であるものの、診療可能な半径16kmギリギリまで訪問診療に行き、患者数は250名を超えています。なぜ、フットケア専門の訪問診療所を開設したのでしょうか―。背景と想いを伺いました。

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他診療科の協力が不可欠なフットケア

-形成外科医として、フットケアを専門にされるようになった経緯を教えていただけますか?

私は大学卒業後、東京大学の形成外科に入局し、6年間毎年違う病院に勤務しながら形成外科医としての研鑽を積みました。形成外科医を目指したのは、大学時代に形成外科は体表面をきれいに治すという職人のような仕事内容であることに惹かれて、自分も職人のように腕を磨きたいと思ったからです。

その後、恩師が杏林大学の教授に就任されていて、杏林大学に来ないかと誘われ赴任することになりました。ちょうど褥瘡など難治性潰瘍の治療を担う医師が足りていなかったので、そこのチームに入ることになったのです。そして、そのチームでフットケア外来を開設することになり、立ち上げに参加するうちに、フットケアにのめり込んでいきました。

-フットケア外来は当時、メジャーではなかったと思います。新しい外来を立ち上げていく中で、最も苦労したのはどのようなことでしたか?

足の病気は、さまざまことが原因で悪化します。中でも、大きな原因となっているのが糖尿病です。糖尿病になり足の感覚が悪くなったり、血流が悪くなったりすることで感染症にかかりやすくなり、それがもとで壊疽が進むことがあります。

ところが、このことが十分に広く知られておらず、非常に悪くなってから紹介されて来る方が多かったのです。正しい知識が周知されていない中で、治療しなければならなかったのには苦労しました。

―それはなぜですか?

足病の治療には非常に時間がかかります。そして糖尿病の合併症として引き起こされる足の病気は、形成外科医だけでは治せません。例えば血流が悪ければ循環器内科の先生に協力してもらいカテーテル治療をしたり、血管外科の先生にバイパス手術をしてもらったりしなければなりません。他にも、糖尿病代謝内科の先生に血糖値コントロールをしてもらう必要もあります。

ところが足の治療には、足のバイパス手術などのように非常に高いスキルが求められることも多く、それこそ足を専門に診るくらいの覚悟と情熱を持って治療に当たらないと、あまりいい治療成績が出ませんでした。そのため、長期に渡って他に専門領域のある医師に協力してもらうことはなかなか難しく、うまく治療が進まず、院内での連携がうまくいきませんでした。

ただ学外には、循環器内科や血管外科の先生で足の病気を専門になさっている先生方がいたので、その先生方と一緒にグループを作り、お互いに患者さんを紹介し合いながら協力して治療していくようにしていましたね。特に循環器内科の先生で足のカテーテル手術ができる先生がほとんどおらず、院内からの反発もありながら、最初は横浜市や横須賀市の先生方と組んでいました。

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PROFILE

木下  幹雄

TOWN訪問診療所

木下 幹雄

TOWN訪問診療所院長
2001年、東京大学医学部卒業。同大学形成外科に入局後、各地の病院にて研鑽を積む。2008年に杏林大学病院形成外科に赴任、フットケア外来立ち上げに参画した。その後、2012年に東京西徳洲会病院形成外科部長に就任、同病院にもフットケア外来を開設。2017年4月にTOWN訪問診療所を開設した。

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