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INTERVIEW

豊田地域医療センター

総合診療科

大杉 泰弘

ジェネラリスト年間1000人輩出を目指す

プログラム開始4年目にして、専攻医18名を抱える豊田地域医療センターの総合診療プログラム。このプログラムを率いるのは、福岡県の飯塚・頴田家庭医療プログラム立ち上げにも携わっていた大杉泰弘先生です。総合診療医育成に力を注ぐ大杉先生が実現したいこととは――?

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専攻医数18名の総合診療プログラム

―現在取り組んでいることについて教えていただけますか?

2015年から愛知県豊田市にある豊田地域医療センターに総合診療プログラムを開設し総合診療医の育成に力を注いでいます。同時に在宅医療支援センターも立ち上げ、医師会の先生方と協力しながら重症患者さんをメインに在宅診療を始めました。

総合診療プログラムの初年度の専攻医は3名でしたが、2016年度は5名、2017年度6名、そして今年度は9名の専攻医がプログラムを受講していて、現在は総勢18名の専攻医がプログラムを受けています。

当プログラムでは、専攻医・指導医ともに「病院でありのままの自分を出しても大丈夫」という安心感を提供できていると思います。総合診療医の多様性を正しく認める。実際に、本当にさまざまな医師がいます。教育者になりたい、開業を現実的な目標にしている、臨床に没頭したい、在宅医療が好き、研究が大好き、経営者になりたいなど――。そんな自由を認める雰囲気をつくれているので、新たにプログラムに入ってくれる医師の増加につながっているのではと考えています。

在宅診療に関しては、私が豊田地域医療センターに赴任まで、医師会の開業医の先生方が在宅医療も担っていらっしゃって、在宅療養支援病院が全くありませんでした。そこですぐに在宅医療支援センターを設立。1年目は月の患者数が約40名で年間のお看取り数が45名、2年目では前者が約120名、後者が約170名と右肩上がりに患者数が伸びていき、昨年は月の患者数260名、年間お看取り数が120名と、右肩上がりに患者数が増えています。

特に初期から高度急性期病院のトヨタ記念病院が、当センターのことをよく理解し信頼してくれて、入院患者さんのみならず、がんの治療のため外来受診をしている患者さんをも積極的に紹介してくださいました。トヨタ記念病院の存在が、当センターの急成長には欠かせない存在でしたね。

以前は在宅医療の供給が多くない分、地域住民の間にも在宅医療という文化が浸透していませんでした。そのため、具合が悪くなれば入院という考えを持っている方が多いのですが、そこを外来の看護師さんやソーシャルワーカーさんが中心となって在宅診療を勧めてくれ、在宅診療に消極的で悩んでいる患者さんには一歩踏み込んだ相談やアドバイスをしてくれることで、患者さんが在宅医療を選択する、という流れもできてきました。

―豊田市で総合診療医の育成に力を入れている理由は、どのようなところにあるのですか?

私は豊田地域医療センターに赴任するまでの7年間、福岡県にある飯塚病院で家庭医療プログラムの立ち上げから専攻医の指導を続けてきました。その時の同僚とこんな約束をしたのです。

「自分たちはジェネラリストの価値が高いと思って活動している。それならば、日本のジェネラリストも、欧米のジェネラリストと同等の価値があると認識してもらえるようにしなければ意味がない。そのために少なくとも、毎年1000人のジェネラリストを輩出できる環境をつくろう。それが自分たちに求められていることであり、目標だ」と。

毎年最低1000人のジェネラリストを輩出するにはどうしたらいいか――。毎年20名受け入れられるプログラムの場合、50のプログラムがなければいけませんよね。実際、アメリカ・ピッツバーグ大学では、毎年30名超のレジデントを育成しています。

最低20名の専攻医を育てられるプログラムをつくる。これを人生の目標にして、これまで飯塚病院と経営統合された頴田病院でプログラムの運営をしてきました。このプログラムが軌道に乗り、20名弱の専攻医が学ぶ環境ができあがりつつあったので、今度は生まれ故郷のある愛知県で同様のプログラムをつくっていこうと考え、豊田地域医療センターでも総合診療プログラムを立ち上げました。

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PROFILE

大杉 泰弘

豊田地域医療センター

大杉 泰弘

藤田医科大学 連携地域医療学講師
豊田地域医療センター 副院長・総合診療科部長・地域医療連携室長・在宅医療支援センター長
1977年愛知県生まれ。2004年に藤田保健衛生大学医学部を卒業、同大学で初期研修を修了。2006年より飯塚病院で後期研修修了後、家庭医療プログラム立ち上げに参加。2011年からは頴田病院家庭医療センター長を務める。2015年豊田地域医療センターに赴任し、在宅医療支援センター、総合診療プログラムの立ち上げを行い、現在に至る。

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