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INTERVIEW

千葉大学病院

神経内科

三澤 園子

未来の患者に薬を届けたい、千葉県の未来の医療に貢献したい

臨床研究者として、2つの希少疾患の新規治療の臨床開発を行ってきた三澤園子先生。それと並行しながら、臨床医として患者とも向き合ってきました。さらに、2児の母として育児と両立しながらキャリアを築き、その経験を活かし、女性医師や若手医師などのサポートや勉強会を開催しています。研究者、臨床医、メンターなど――さまざまな役割をどのような想いを持って、取り組んでいるのかお伺いしました。

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臨床医のスキルを究めるために研究者に

―現在、どんなことに取り組んでいるのでしょうか?

千葉大学病院脳神経内科の臨床研究者として、「クロウ・フカセ(POEMS)症候群」と「ギラン・バレー症候群」という希少疾患の新規治療の臨床開発を行っています。現在は、両者の臨床試験が終わり、承認申請に向けての業務をしています。並行して、次の研究テーマとなる疾患や治療薬などを検討しています。

それ以外にも、大学院生や医学部生の指導や臨床医として診療も行っています。目の前にいる患者さんの病気を治したい、健やかに生きたいと言う患者さんの思いに応えたい。私にとっては、これが全てのモチベーションの源です。

―「クロウ・フカセ(POEMS)症候群」と「ギラン・バレー症候群」それぞれの研究概要について、簡単でご説明いただけますか?

クロウ・フカセ症候群に対して、薬剤「サリドマイド」の臨床開発を始めたのは2006年でした。その後、サリドマイドの本格的な実用化(保険適用取得)を目指し、2010年に千葉大学病院では初めてとなる医師主導治験を開始しました。当時は医師主導治験がまだあまり盛んではなく、周りに教えてくれる人はほとんどいませんでしたし、大変さを理解してくれる人もいませんでした。試行錯誤を繰り返しながら、プロジェクトマネージャーの方と二人三脚で、5年かけてなんとか試験を完遂しました。

その医師主導治験の結果をまとめた論文が、2016年に「Lancet Neurology」に掲載されました。結果を形にできたのが嬉しかったのはもちろんですが、臨床試験の意義を周囲の方に理解して頂くきっかけになったことはとてもありがたかったです。現在は、1~2年以内の適用取得を目標に、申請の準備を進めています。

ギラン・バレー症候群に対しては、薬剤「エクリズマブ」を標準治療である免疫グロブリン療法に上乗せして投与する効果と安全性を検討するための医師主導治験を全国13施設で行いました。その結果、6ヶ月時点で走行可能な患者さんの割合が、エクリズマブの投与により74%(プラセボ群では18%)になりました。小規模な試験における一項目のみで示された結果ですので、エクリズマブの有効性を断言するまでには至っていません。しかし、ギラン・バレー症候群の治療は25年以上進歩のなかった領域です。新規治療の可能性に、世界中の専門家から大きな期待や関心が寄せられました。臨床現場にできる限り早くお薬を届けることを目指し、様々な準備を現在進めています。

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PROFILE

三澤 園子

千葉大学病院

三澤 園子

千葉大学病院 脳神経内科 准教授
1999年千葉大学医学部を卒業後、4年間関連病院にて研修を積む。その後、千葉大学大学院研究院神経内科学教室の助教を経て、2006年、同教室講師に就任。2017年より現職。2015~2018年まで医局長も務める。一方で、2013年には女性医師向けのネットワーク「立葵の会」を設立、2018年には、医師がリーダーシップやマネジメント能力を学べる場「育星塾」の発起人となるなど、多方面で活躍している。

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