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INTERVIEW

国立国際医療研究センター病院

総合診療科

稲垣 剛志

日々の経験を大切に、社会に貢献できる医師を育成したい

救急医療からキャリアをスタートし、2018年からは、国立国際医療研究センター病院で総合診療の臨床と、若手の教育に携わっている稲垣剛志先生。どのような患者さんもまずは受け入れる総合診療科に、可能性を感じています。その思いの根底には、医学に垣根はなく、必要とされているところで需要のある仕事をするべきという考えがあります。

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目指すは需要にこたえる仕事と、日々の経験を大切にする教育

—現在はどのようなことに取り組まれているのですか?

国立国際医療センター病院の総合診療科診療科長として勤めています。地域や病院が必要としているのであれば、手術以外はなんでも取り組めるところに、総合診療科のやりがいと可能性を感じます。

課題意識を持っているのは、医師が都市部に集中し、国としても地域偏在、診療科偏在をなくしたいけれど上手くいかない現状です。医師に限らず、多くの人にとって自分の専門領域や働く地域を変えることに、難しさはあるでしょう。

しかし医師はこのような状況を自分の問題として捉え、状況の変化に応じていかなくてはいけない。解決のためならば頑固にならず、働く地域や内容を変えながら需要のある仕事をしたほうがいいと、考えています。そういった側面においても、総合診療医は柔軟な対応ができるのではないでしょうか。実際、総合診療専門研修プログラムでは1年間医療過疎地などで研修をすることが求められています。例として当院の専門研修プログラムは、宮城県に在宅療養支援診療所を開設している医療法人社団やまとと連携し、最大3カ月間宮城県北の医療過疎地で研修を積めるようにしています。

そして私自身、救急から総合診療に移った経緯があります。個人としてもいつか総合診療をやりたいという思いがありましたが、きっかけは病院の事情でした。救急医療より総合診療のほうが、各内科の専門分野についての知識も必要ですし、より深い治療にも踏み込んでいかなければいけませんから、今、まさにその学び直しをしています。大変さの一方でやりがいも大きいです。医師として10年以上キャリアを積んだタイミングで転向できたことは、自分にとってプラスだったと思います。

—2017年からは、医療教育部門・副部門長という臨床研修の責任ある立場にもなられました。国際医療研究センター病院では、大学病院に近い数の研修医を受け入れていらっしゃいますが、どのような仕事をされているのでしょうか?

病院の臨床研修システムを改善していくことが、自分に割り当てられた仕事のひとつです。毎年研修医のプログラムを組んだり、より良いものにしていくために研修医だけでなく研修内容も評価したりしています。これらは年単位、月単位の仕事ですね。他には教育的なイベントのセッティングをしたり、研修医や指導者からの突発的な問題の相談にのったりもします。

—教育において、大切にしていることはありますか?

日々の経験です。臨床研修や臨床実習での経験を、即時「これが倫理」「これが利他的精神」と言葉にあてはめて整理することは難しいけれども、あとから振り返ってみて、「あれが〇〇だったな」と理解できることはとても多いです。

だからこそ、そのような日々の経験を私自身が大切にしなくてはいけませんし、指導者としては、若い医療者の日々の経験1つ1つが、将来を良くする糧になり、社会に貢献できる医師を形づくるもの、と肝に銘じています。

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PROFILE

稲垣 剛志

国立国際医療研究センター病院

稲垣 剛志

国立国際医療研究センター病院総合診療科診療科長。第一総合医診療科医長。医療教育部門・副部門長。東京大学医学部医学科卒業。聖隷浜松病院初期臨床研修医。国立国際医療センター救急科レジデントを経て現職。

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