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INTERVIEW

板橋中央総合病院

院長

加藤 良太朗

医学×法学で、医師が安心して働ける社会に

大学卒業後、麻酔科を経て渡米。14年間に及ぶ滞在中に弁護士資格を取得し、ホスピタリスト科の立ち上げや最先端の集中治療にも携わるなど、多彩なキャリアを築いてきた加藤良太朗先生。現在は板橋中央総合病院の院長として、若手医師が安心して働ける環境づくりや教育に注力しています。医師として法律を学んだ動機や、これからの若手医師への思いについて伺いました。

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◆職員にとっても安全な環境づくりを

―若い医師が安心して働ける環境づくりをライフワークにされていますが、具体的にはどのような取り組みをされているのですか?

私がちょうど研修医をしていた2001年ごろは医療訴訟が増え、医療へのバッシングも強い時代でした。過労から医療事故が起きたり、研修医が医療過誤で告訴される事例などもありました。恩師である森田茂穂先生から「若い医師が安心して働けるような環境を作るのがお前の仕事だ」と常々言われていたこともあり、アメリカ留学から帰国した後、取り組み始めました。

大事なのは、患者さんはもちろん、職員にとっても安全な環境をつくることです。人間だからミスをしてしまうことはありますが、患者さんに支障が出る事態につながらないシステム作りが必要です。

たとえば、起こりやすい医療事故の1つに、中心静脈にカテーテルを留置する手技があります。これを若手の医師が1人で行っていたり、あるいは1年目の初期研修医とほとんど実践したことのない3年目の医師の2人が組んでいたり……という実態があります。

そこで帰国後に赴任した板橋中央総合病院では件数をこなし、診療部長の承認を得た者だけが1人でこの手技を行うことができる認可制を導入しました。

また、インストラクター制度も取り入れています。これは、教える立場になるために必要な実績を定めたもの。当初は現場から反発もありましたが、患者さんの事故につながらないことが研修医を守ることにもなる、という話を丁寧に説明して少しずつ理解してもらいました。

―チーム医療も導入されたと伺いました。

1人の医師が全ての責任を持って1人の患者を診る主治医制は素晴らしいのですが、やはり人間の能力には限界があります。24時間365日となると難しい。そこで、きちんと申し送りをしてチームで診るという体制に変えていきました。ベテランの医師が常に入ることで、キャリアの浅い医師にとっても患者さんにとっても、良い影響が出ています。

こうした取り組みを、私たちのような民間病院が健全な経営の中で行うことに意味があります。国立でも大学病院でもない、補助金が全く出ない民間病院が身の丈に合った方法で実践すれば、他の病院でも可能だと示せるからです。もちろん簡単ではありませんが。

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PROFILE

加藤 良太朗

板橋中央総合病院

加藤 良太朗

板橋中央総合病院院長

1999年東京大学医学部を卒業後、帝京大学医学部付属市原病院麻酔科を経て、2001年からワシントン大学医学部内科に勤務。2007年にワシントン大学ロースクールを卒業し、ニューヨーク州弁護士資格を取得。ワシントン大学医学部内科講師およびセントルイス退役軍人病院のホスピタリスト科長を経て、2013年よりピッツバーグ大学医学部集中治療科で勤務。2015年に帰国し、板橋中央総合病院の副院長兼総合診療内科主任部長として着任。2019年より現職

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