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INTERVIEW

医療法人社団 焔

在宅医療

安井 佑

人生の最期をトータルに支える仕組みを構築

2030年、日本では「看取り難民」が約47万人発生すると言われています。この問題を看過せず、2013年自宅で自分らしく死ねる世の中づくりを理念に掲げ、在宅医療診療所「やまと診療所」を設立した安井佑先生。2014年には患者の歴史と病状を把握し、今後どう生きていくかの指針を立てる在宅医療PA(Physician Assistant、以下PA)という職種を導入しました。2021年には、新たな挑戦として「おうちにかえろう。病院」を開院。今回はPA制度の成果や、新設病院について伺いました。

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◆広めたいのは「世の中がよくなる」医療

―PA制度を導入されて7年。現在の成果についてどう捉えていますか?

患者さん、ご家族、地域に対する成果で言えば、医師の力量に頼りすぎることなく、チームとして高いクオリティの在宅医療を提供できています。現在、法人全体で1200名の患者さんを診療しており、昨年は500名以上の方をご自宅で看取りました。そこには、PAの力が必要不可欠になっています。

一方医療業界への成果でいうと、PAという言葉は広がりましたが、その役割を正確に理解されている方はまだ半分くらいかもしれません。導入当時は「看護師ではない分、給料を抑えられて採用しやすい」「医師にとって便利なアシスタントになる」などの理由で、PA制度を習いたいという方が来られていましたから。

私たちは一から人を見て育て、その先に、患者さん、ご家族の気持ちを汲み取り成果を出す医療を実践しています。もし他院で同様のPA制度を導入しようとするなら、教育制度や活躍する場所づくりから始まり、極端な話、共に働く医師の価値観そのものも変える必要があると思います。

―PA制度の本質をもっと広く知ってもらいたいとお考えですか?

医療業界に広める必要があるのは、PA制度に限ったものではないと思っています。PA制度はあくまで1つの手段。私たちチームの理念は、「自宅で自分らしく死ねる。そういう世の中をつくる。」です。力量的にはまだまだですが、私たちがこの理念に基づいて人材を育成し、もっと成果を出せた時に、「世の中がよくなる」医療として広く発信していきたいと考えています。

―2021年4月に「おうちにかえろう。病院」を開設しました。その背景について教えてください。

やまと診療所として、自宅に帰って最期を迎える方々の支援を始めて9年目です。2020年度は、がん患者さんの看取りが344名で、非がん患者さんが169名。開院当初に比べて非がん患者さんを支える割合が大きくなってきました。そこで、もっと長い目で「ペイシェント・ジャーニー」を支える必要が生じたのです。

がん患者さんは比較的ADL(日常生活動作)が保たれていて、最後の2カ月ほどで急激にADLが下がることが多いです。

一方の非がん患者さん、例えば認知症やフレイルの患者さんは、症状の改善、増悪をくりかえしながら、ADLが少しずつ下がっていきます。期間が10年に及ぶこともあり、この方々を支えていくためには「最期は自宅で看取れます」というメッセージだけでは弱く「人生の最終段階をどう幸せに生きるのか」を、トータルで支える仕組みが必要ではないかと考えるようになりました。

その仕組みには当然、一時的な避難場所としての病院も必要になってきます。ですが現状200床以下の地域病院は疾患の治療中心で、退院する前日まで1日4回、看護師さんが薬を飲むところまで確認します。しかし家に帰った患者さんは、一人暮らしで、1日2食、菓子パンと牛乳という生活をしていることもある。だとすれば「生活を支える」医療をするべきです。その役割を担うために病院を開設しました。

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PROFILE

安井 佑

医療法人社団 焔

安井 佑

医療社団法人 焔(ほむら)理事長、『TEAM BLUE』代表。

2005年東京大学医学部卒業。千葉県旭中央病院で初期研修後、NPO法人ジャパンハートに所属。1年半ミャンマーにて臨床医療に携わる。杏林大学病院、東京西徳洲会病院を経て、2013年に東京都板橋区高島平にやまと診療所を開院。在宅医療の改革に積極的に取り組んでいる。

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