正体は「あか」のたまった袋!? 粉瘤はなぜできるのか
記事
粉瘤(アテローム)というのは、皮膚に内向きの袋が形成される病気です。袋の中には角質(あか)や脂質がたまっています。若い方からご高齢の方まで、体のどこにでもできる可能性があり、大きさは5ミリ程度の小さなものから十数センチの大きなものまで様々です。
原因は今でもはっきりとは分かっていないのですが、毛穴の上方部分(毛漏斗部)で、何らかの刺激により皮膚がめくりかえって皮膚の下に袋状構造物ができることがきっかけになると考えられています。
出来初めは小さな袋ですが、袋の内部に脱落した角質や脂質が貯留されて、徐々に大きくなっていきます。
手のひらや足の裏の場合は、外傷などにより表皮の成分が傷の中に埋没してそこで袋状の構造を作る、というメカニズムが考えられています。ウイルスの感染が関与しているという説もあります。
どういう人がなりやすいのかは今のところ分かっていません。ただ、体質的にたくさんできてしまうという方もおられるようです。
粉瘤は放っておいても直接健康を大きく害するものではないものの、何らかのきっかけで貯留したものが排出された時は、不快な臭いがすることがあります。また細菌の感染が合併すると炎症性粉瘤と呼ばれ、時に激しい痛みが出て、早急に治療を行う必要が出てきます。
何度も腫れて炎症を起こしていると、粉瘤が周りの組織と癒着し(こびりついて)、手術が困難となることもあります。顔などにできると徐々に目立ってきてこぶのようになってしまい、見た目に影響を与えるということもあります。
そのため、粉瘤に気がついたらなるべく早く治療することをお勧めしたいのですが、忙しくてなかなか病院に行けないという方も多いようです。
粉瘤の治療は、基本的には手術的に取り除くしかありませんが、手術技術の進歩に伴って、治療期間は短くなり、傷も小さくて済むようになりました。そのため忙しい方でも治療を受けやすくなっています。
医師プロフィール
花房 火月 皮膚科
東京大学医学部を卒業後、癌研有明病院、東京大学医学部附属病院、NTT関東病院などで研修を積む。2011年、東京都三鷹市にて独立。年間2800件を超える手術を担当するなど、皮膚科、皮膚外科、美容皮膚科の分野で活躍している。2014年には埼玉県新座にもクリニックを開設。大病院での経験を糧に「患者さん一人ひとりにじっくり向き合う診療」をポリシーとし、広く開かれた医療を目指しながら、「より多くの患者さんのための医療体制にしていきたい」と皮膚疾患に関する情報発信にも注力している。テレビ出演歴多数。