現地医師が見た、カリフォルニアの医療事情[2]
記事
カリフォルニアで医師の職を得るのは並大抵のことではない――。カリフォルニアで開業する医師が直面した、現地ならではの事情とは。
私がカリフォルニアで職を得るまでのプロセスを紹介しましょう。カリフォルニアで希望の職を得るのは大変です。カリフォルニアは、アメリカ50州の中でも特別な光を放っている場所で、国内外から多くの人たちを惹きつけています。透き通るような青空、やしの木とビーチ、ビーチボーイズが作り上げたどこまでも明るいイメージ。ハリウッド、ディズニーランド、ユニバーサルスタジオ、金門橋、ヨセミテ国立公園などの世界的な観光名所。シリコンバレーを中心とした隆盛を誇るIT産業。どの分野においても魅力を上げたらきりがなく、多くの人々がカリフォルニアを目指します。
医師も例外ではありません。アメリカの医師の職探しは、インターネットや無料のリクルーターを使うのが一般的ですが、そもそもカリフォルニアでは求人がほとんどありません。求人が公開される前に口コミだけでポジションがすぐに埋まってしまうためです。私はカリフォルニアに引っ越す二年ほど前から、毎朝インターネットの求人情報をチェックするのを日課としていましたが、徒労に終わった苦い経験があります。
就職先のポジションを獲得できたのは、現在所属している開業医グループで先に働いていた友人が誘ってくれたからです。このような内部関係者がいない限り、カリフォルニアで希望のポジションを得るのはとても困難です。今も、知り合いのニューヨークの医師がカリフォルニアの就職先を探していますが、難航しています。
カリフォルニアに職を得るのと前後してしなくてはならないのは、カリフォルニア州医師免許の取得です。アメリカ合衆国では、医師免許は連邦政府(Federal Government)ではなく、州政府(State Government)の管轄です。したがって、ニューヨーク州の医師がカリフォルニア州で診療するためには、カリフォルニア州の医師免許を取らなくてはなりません。
ACGMEという機関に認定された病院で臨床研修を終えていれば、ペーパーワークのみで済むのですが、カリフォルニアの場合、州政府赤字による職員削減のあおりで、書類処理がなかなか進みません。そのため、州の医師免許を取得するまでに3カ月ほどかかります。これはカリフォルニアの特殊事情といえます。
次の記事はこちらへ[3]
前の記事はこちらへ[1]
医師プロフィール
齋藤 雄司 循環器内科
新潟県出身。新潟大学医学部卒業後、同大学内科研修、大学院修了。血管生物学の基礎研究に従事するためポスドクとして渡米。その後、ロチェスター大学関連病院内科レジデント、カリフォルニア大学アーバイン校循環器フェロー、カリフォルニア大学サンディエゴ校心臓電気生理フェローなどの臨床トレーニングを行う。バッファロー大学内科クリニカルインストラクターを経て、現在は、カリフォルニア州モントレー郡の開業循環器グループに所属。不整脈を含む心臓病診療に従事する。