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現地に赴任した女性医師が語る! エボラ体験記米国編[2]

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米国国内でもエボラ診断例が出たことで、過剰な反応も見られるようになった。恐怖心から不要な差別や人権侵害を行っても感染予防にはならないのだが……。

 

米国国内でもエボラ診断例が出たことで、エボラへの警戒心が高まり、過剰ともいえる対応も見聞きするようになった。2014年11月に米国公衆衛生学会議(American Public Health Association Annual Meeting)がルイジアナ州で行われた際は、21日以内にエボラ流行地域から帰国した人は学会への参加を断る通達がルイジアナ州から出された(https://www.apha.org/~/media/files/pdf/meetings/annual/louisianaadvisory.ashx)。また、エボラ対策に関わったスタッフの家族が学校や地域活動への参加を拒否される、という事態が生じ、ジョージア州とCDCが合同で通知を出している。

州によっては、エボラ流行地域からの帰国者を21日間隔離する決定をしたところもあった。この決定に強い反対の意を示したのが、国境なき医師団を通じてシエラレオネでエボラ診療に従事したケーシー・ヒコックス(Kaci Hickox)氏である。

ケーシーは米国へ帰国後、症状がなかったにもかかわらず病院の外に設けられたテントに隔離された。エボラは症状がある人の体液に接触することで感染するとされているため、無症状だったケーシーをテントに隔離する決定は過剰な反応であったと言わざるを得ない。

結果として無症状であるケーシーのテントへの隔離命令は取り消されたのだが、こういった対応をHIV患者への差別的な対応と比較する記事を見かける。HIVが新たな病気として登場した1980年から1990年代には、感染者が職を失ったり、学校へ来るのを拒否されたりすることがあったが、こういったことを行っても感染予防にはならない。

人々の健康を守るのは大事である。しかし恐怖心のあまり不要な差別、人権侵害を生じることがあってはならない。新聞、テレビ、インターネット、SNSなど現在はさまざまな情報源があるが、いたずらに恐怖心をあおるのではなく、正しい知識が広まるよう、適切な情報が提供されることを切に願うばかりである。

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医師プロフィール

小林 美和子 感染症内科

世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。

小林 美和子
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