健康に長生きするために必要なこと~心のあり方~
記事
◆より質の高い「健康」を手に入れるために
「健康」というと、多くの人は「病気じゃない状態」のことだと考えるでしょう。だから健康の専門家は、病気を治す医師だとも。しかし医師は、「病気の」専門家であって、「健康の」専門家ではありません。
そして実際には、私たちが真に求めている健康とは「病気じゃない」という意味だけの健康ではないはずです。
心身の健康とは、本来、自分らしく生きていくために必要な財産です。ですから「病んだら治せばいい」ではなく、健康の増進、つまりより良い健康を手に入れようとすることが大切なのです。「病気じゃないからOK」というレベルの健康だけでなく、その一歩先にある質の高い、いわば“一級品”の健康を自ら獲得していくことが、自分らしく生きていくためには求められているのです。
健康を獲得するというイメージは、スポーツだとわかりやすいでしょう。自ら鍛えることによって心身を強くしなやかにし、自分の力を発揮していくのがスポーツだからです。ですが、実は誰にとっても、その人の人生や仕事においてはスポーツと同じように自ら獲得していく一級の健康が必要なのです。
一級品の健康を手にするために、大切なのは何か?
実は、心の状態を「ご機嫌/フローな状態」に保つことこそが、病気の最大の予防なのです。
※心がご機嫌な状態とは?:「フローな風が吹く 〜人生を悔いなく生きるために〜」
“病は気から”という昔からの教えがあります。気とは心の状態のことです。したがって、機嫌の良いフローな心の状態で過ごすことこそが、疾病予防に繋がる最大のメソッドなのです。
◆「健康」の長さを少しでも伸ばすためには?
さて、ここまでは「健康の質」についてお話しましたが、別の視点から見てみましょう。
健康の長さ、すなわち寿命は何の影響を受けているか?
それは、その人自身のライフスタイルの3つの柱、すなわち「栄養・休養・運動」です。このライフスタイルですが、多くの人は、固定化しているのではないでしょうか。例えば、楽だから偏った食生活になっていてもそのまま変えない、ついつい夜更かししてしまう、運動は必要と分かっていても面倒でやらない――。そこに居心地の良さを感じているために、気付けばついつい、同じ考えで同じ生活をしてしまいます。
ところが、より長く健康でいるためには、ライフスタイルを変化させていく必要があります。このときネックになるのが、自分自身の心の“とらわれ”です。頭では変化が必要だと分かっていても、心がとらわれた状態では、「いつもと同じ」ことに居心地の良さを感じ、離れることは難しいでしょう。
ここでも、心を「ご機嫌」な状態にすることが重要になります。心がご機嫌な状態とは、「揺らがず・とらわれない」状態です。
つまり、この状態へ自らの心を導いていくことで、ライフスタイル改善のために自らの意識を変えることができます。そして、行動変容へ反映させていくチャンスを増やすことができるのです。
心の状態を「ご機嫌」にすることで、健康のための生活変容の可能性が高くなるのです。
さらに、健康を司るライフスタイルの3つの柱の1つ休養の中には、心のマネジメントも含まれます。心のマネジメントは、しばしばストレスマネジメントと呼ばれますが、私は一級の健康のためには、ご機嫌マネジメントの方が大切なのではないかと思っています。
ストレスマネジメントはストレスに対応する不快対策であるのに対し、ご機嫌マネジメントは、それより一歩先んじた心をフローに導くマネジメントです。
以上のように、心の状態をご機嫌にしていくことは、質的にも量的にも健康を増進させていくために、極めて大切な生き方なのです。
私はスポーツドクターとして、心の状態を自らご機嫌な方へ導いていく脳の習慣(これをライフスキルと呼んでいます)をお伝えし、さまざまな人にトレーニングを行なっています。二度とない自分の人生の質を高めて生きていくために、心のための脳の習慣を磨きましょう。
医師プロフィール
辻 秀一 スポーツドクター
エミネクロスメディカルクリニック
1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学で内科研修を積む。同大スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学び、1986年、QOL向上のための活動実践の場としてエミネクロスメディカルセンター(現:(株)エミネクロス)を設立。1991年NPO法人エミネクロス・スポ-ツワールドを設立、代表理事に就任。2012年一般社団法人カルティベイティブ・スポーツクラブを設立。2013年より日本バスケットボール協会が立ち上げた新リーグNBDLのチーム、東京エクセレンスの代表をつとめる。日本体育協