アトピーのなりやすさ、兄弟と腸内細菌が関係?
記事
幼少期に菌を避け過ぎないほうがアレルギーになりにくい、という「衛生仮説」をご存知でしょうか。近年、都会より田舎で育った子供のほうが、また自然や農業に触れている方がアレルギーになりにくいとの報告が出てきています。
このような環境の差が身体のどのメカニズムを刺激して、アレルギーの発症に関連しているのか研究が盛んに行われています。今回は、アレルギーと腸内細菌の関係、そこに兄弟数や産まれた時の環境が関連しているか調べた研究をご紹介しましょう。
Establishment of the intestinal microbiota and its role for atopic dermatitis in early childhood.
J Allergy Clin Immunol. 2013;132:601-607.
<方法>
・606名の新生児、かつ片親もしくは両親にアトピー性皮膚炎、アレルギー疾患、喘息がある人
・生後5週から31週まで腸内細菌製剤またはプラセボを内服(二重盲検試験)
・生後5週、13週、31週で便を採取
・分娩方法(自然、補助あり、帝王切開)、授乳状況、兄弟数についてアンケート
・腸内細菌はbifidobacteria, E coli, Clostridium difficile, Clostridium cluster Ⅰ, Bacteroides fragilis group, lactobacilliについて16S rDNAをreal-time PCR解析
<結果>
・薬剤2重盲検試験の結果(詳細はJ Allergy Clin Immunol 2012;129:1040-147)より、腸内細菌製剤を投与しても、乳児の腸内細菌叢に影響はなかった。
・帝王切開ではbifidobacteria, Bacteroidesが少なく、 Clostridium cluster Ⅰが多かった。
・兄弟数とBacteroidesとlactobacilliは相関し、Clostridiaは減少していた。
・Clostridia値が高いと、アトピー性皮膚炎発症のリスクは上昇していた。
兄弟が多いと、腸内細菌環境が良かったという結果でした。年上の兄弟がいると、外で遊んだ土や菌を持ち帰り、乳児と触れ合うことで、乳児と共有され ていくと考えられています。今回、Clostridiaがアレルギーの発症と関連がありそうでした。薬などを使用して「菌を倒す」のではなく、食事や外と の触れ合いを通して、様々な菌に触れClostridiaが住みにくく、善玉菌が住みやすい環境を作るのが良いと考えられます。
医師プロフィール
田中 由佳里 消化器内科
2006年新潟大学卒業、新潟大学消化器内科入局。機能性消化管疾患の研究のため、東北大学大学院に進学。世界基準作成委員会(ROME委員会)メンバーである福土審教授に師事。2013年大学院卒業・医学博士取得。現在は東北大学東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門助教。被災地で地域医療支援を行うと同時に、ストレスと過敏性腸症候群の関連をテーマに研究に従事。この研究を通じて、お腹と上手く付き合えるヒントを紹介する「おなかハッカー」というサイトを運営。また患者の日常生活課題について多職種連携による解決を目指している。
【おなかハッカー】