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現地医師が見た、カリフォルニアの医療事情[4]

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アメリカでは、大手病院グループによる開業医院の買収が進んでいる。背景にある理由の一つは、アメリカの保険システムだ。


最近では、病院は自前のホスピタリストを持つだけにとどまらず、外来部門も手中に収めようとしています。多くの開業医院が大手病院グループに買収されており、入院治療と外来診療を一元的に供給する一大医療グループが各地で形成されつつあるのです。

これについて、不思議なことに開業医側の抵抗はありません。それどころか、この変化は全国的に急速に進んでいます。それには理由があります。現在のアメリカの保険システムでは、同じ検査でも、開業医で施行された場合と病院で施行された場合とでは、検査に支払われる報酬に2〜3倍ほどの開きがあり、病院検査のほうが高くなっているのです。したがって、開業医でいるよりも病院の一部となって働いたほうが、同じ仕事量でも給料が良くなる、というわけです。ビジネスを拡大したい病院と、収入を増やしたい医師との思惑が重なり、少なくとも今の段階では、ウィンウィンの関係です。

この変化の進行度には地域によって開きがありますが、カリフォルニアでも珍しいことではなくなってきました。ワシントン州シアトルでは、病院所属でない心臓病専門開業医は絶滅し、すべての医師が病院のお抱えになったと聞きます。

以上はアメリカでは新しい変化といえますが、日本の病院では外来部門も併設されているのが普通ですので、日本から見れば何も新しいことではありません。しかし、その成り立ちは驚くほど異なります。日本では、外来、入院、薬局などが医療資源集約のために、自然発生的に病院と同じ屋根の下にあったという感じでした。しかしアメリカでは、ビジネスを突き詰めた結果、こうなったといえます。お国柄でしょうが、行き着く先のシステムが一緒というのは面白いものです。私のような俗物は、「ようやくアメリカも日本に追いついてきたか」と一人優越感に浸っています。

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医師プロフィール

齋藤 雄司 循環器内科

新潟県出身。新潟大学医学部卒業後、同大学内科研修、大学院修了。血管生物学の基礎研究に従事するためポスドクとして渡米。その後、ロチェスター大学関連病院内科レジデント、カリフォルニア大学アーバイン校循環器フェロー、カリフォルニア大学サンディエゴ校心臓電気生理フェローなどの臨床トレーニングを行う。バッファロー大学内科クリニカルインストラクターを経て、現在は、カリフォルニア州モントレー郡の開業循環器グループに所属。不整脈を含む心臓病診療に従事する。

齋藤 雄司
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