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千葉県南部で働き感じた課題解決のために

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医師4年目の山田悟史先生は、一度は工学部に進んだものの、人の生により近いところで働きたいと考え、医師になることを決意。同時に千葉県内で自然豊かな地域で暮らしたいとも考え、自治医科大学に進学しました。現在は千葉県南部の南房総市の病院に勤務し、学生時代とはまた違った課題感を抱いています。今後、どのようにキャリアを積み、千葉県での医療に貢献していきたいか伺いました。

■千葉県南房総で働いて感じる課題

―医師を目指した理由から教えていただけますか?

中学高校時代に医師という職業を選択肢として考えたことがありました。しかし当時は、身近な人の死の経験はなく、人の命に関わる責任の重さから漠然と医師は難しいと思い、好きだったものづくりに携わろうと考え工学部に進学しました。

ところが大学3年生で卒業後の進路を決める時期に、どのような仕事をしたいのか、どのような地域で働きたいかを考えた際、人と直接的に関わりながら、生きることの根幹的な部分を支援できる仕事をしたい、また、自然豊かで地域のコミュニティの中で自分自身が生きている実感を持てる地域で暮らしたいと考えるようになりました。それを実現するにはものづくりに携わるより、やはり医療職だと考えるようになったのです。工学部を卒業後、自治科大学医学部に進学しました。

医学部卒業後は国保旭中央病院で初期研修を修了、そして3年目からは南房総市立富山国保病院に勤務しています。

―千葉県で働き始めて感じる課題はどのような点にありますか?

千葉県は9つの医療圏がありますが、それぞれが抱える課題に時相の違いがあるように感じます。

初期研修をしていた国保旭中央病院のある県北東部の香取海匝医療圏では、急性期治療後の療養場所となる地域包括ケア病床や回復期リハビリテーション病床、在宅医療を提供する医療機関の不足から治療後の行き先に難渋する患者さんが多いです。また、プライマリ・ケアを担う医師の不足からか、かかりつけを持たずに重症化して初めて医療機関を訪れる患者さんが少なくないことなどが課題になっています。

出身の柏市のある県北西部の東葛北部医療圏では、今後、後期高齢者人口の急速な増加が予想され、増える医療需要に応えるためのシステム作りが課題となっています。

一方、南房総市を含めた安房医療圏では、高齢化率は43%と県内トップで、高齢化は行き着くところまで行き、今後は人口減少社会の中でどのように医療提供体制をリモデリングしていくかが課題となっています。安房医療圏には当院を含めて常勤医師が3,4名の小規模病院が点在していますが、人口の減少に伴う医療需要の減少から、いずれの病院も採算を保つのが困難になってきています。

学生時代に地域医療実習として現在の勤務先に来た際には、病院を集約して病院の診療機能を維持し運営効率をあげるほうが地域のためになると考えていました。しかし実際に働いてみると、独居高齢者や、80代90代の高齢者が2人だけで生活している家庭が多く、自分たちの生活の足がないため公共交通機関を使って通院しているものの、バスが1時間に1本しかなく、通院に半日かかっている方がいて、医療アクセスが非常に悪い患者さんが想像以上に多くいることに気が付きました。

そのような方がいる地域で病院を1つに集約してしまったら、今はなんとか通えている患者さんも通えなくなってしまう可能性があり、医療機関が地域にまんべんなくあることも大事なのだと感じるようになりました。

そうは言っても、人口減少は更に進行する見込みであり、医師不足や病床不足を懸念する段階ではなく、病院の機能分担の見直しとサイズダウンを含めてリモデリングしていかなければいけない段階に来ています。しかしながら、公立病院の場合は行政も絡んでくるので、行政や市民の理解を得ながらダウンサイジングを進めていくのは結構難しいのではないかと思います。人口減少を考えると、せざるを得ないと思いますが、どのように進めていくかが難しく、今はそこに課題を感じています。

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医師プロフィール

山田 悟史 総合診療科専攻医

1986年、千葉県出身。2016年自治医科大学を卒業後、国保旭中央病院にて初期研修を修了。2018年4月より、南房総市立富山国保病院に勤務。

山田 悟史
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