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高浜町で「ACP×地域づくり」に挑戦したい

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医師5年目の安原大生先生は鳥取大学卒業後、湘南鎌倉総合病院での初期研修中に抱いた課題感から、生涯をかけてアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に取り組む決意をしました。感じた課題や具体的にどのような取り組みに挑戦しようとしているのでしょうか?

◆救急でACPの必要性を感じた

―ACPに取り組もうと考えたきっかけを教えていただけますか?

初期研修時に湘南鎌倉総合病院の救急現場で抱いた課題感がきっかけです。誤嚥性肺炎を繰り返し、施設と病院を行き来しているような高齢者が大勢いました。その度にご本人もご家族も一大事。慌てふためいている時に、人工呼吸器を付けるか否か、心肺蘇生は行うか、延命治療を望むかなど、考える時間も十分にないまま決めていかなければいけません。そのような状況で、納得のいく判断ができているのか――そう思うことがたくさんありました。

ところが時々「かかりつけの先生とよく話し合っているので、人工呼吸器や心臓マッサージはしないでください。それは本人も望んでいません。ただ今の症状が少しでも軽くなるならと思い救急車を呼びました。もし何もできることがなければ自宅に帰ります。最期を迎える覚悟はできています」と、はっきり意思を示されるご家族も見かけました。そのようなご家族には慌てふためいた様子も全くなく、それに衝撃を受けたのです。そしてかかりつけ医のすごさを感じ、自分がやりたいのは、そのかかりつけ医のようなことだと直感したのです。

もともと学生時代から漠然と看取りへの関心を持っていました。人は必ず亡くなる。誰にも起こることだからこそ、きちんとコーディネートやサポートしていくことが大事だと感じていて、初期研修医になってからも「いい看取りをするにはどうしたらいいのか」は自分の中で課題でした。

当時アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という概念を知りませんでしたし、一緒に研修していた周囲の人も誰も知りませんでした。自分で調べていく中で初めてその言葉を知り、自分のやりたいことがカチッと決まり、生涯をかけてACPに取り組もうと決意しました。

初期研修が始まってからも明確に将来どの診療科に進みたいか決まってなかったのですが、ACPをやるには何科が最適かという点から逆算して、家庭医療に進むことを決めました。

―家庭医療後期研修は福井大学で受けられていますが、なぜですか?

大学3年生のときにたまたまSNSで見つけた「夏だ!海と地域医療体験ツアーin高浜」という福井県高浜町の和田診療所が主催する体験ツアーに参加したんです。当時鳥取大学でも地域医療の重要性は教わっていたのですが、どうしたら生活に寄り添った地域医療を提供できるのかという手法は認識していませんでした。ところが「夏だ!海と地域医療体験ツアーin高浜」に参加したら、生活に寄り添うことの意味や方法を知ることができ、そこで実践されていたのが家庭医療で使われているBio Psycho Social(BPS)モデルだったのです。

このように、私の家庭医療との出会いは高浜町であり、そこが私の家庭医療の原点です。また、この時に出会った福井大学地域プライマリケア講座の井階友貴先生の町づくりや健康づくりの活動を、その後もSNSを通してずっと見ていて、ACPの活動を進めていく上で、地域住民が自分の健康について考える活動は大事な地盤になると感じていました。そのため、井階先生のもとで地域づくりも含めて学びたいと考え、高浜町で家庭医療研修を受けたいと思ったのです。

ただ高浜町にはプログラムがないので、井階先生に相談させていただき、福井大学総合診療部の後期研修プログラムに入り、高浜町で研修させていただくことになりました。

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医師プロフィール

安原 大生 家庭医療後期研修医

埼玉県出身。2015年鳥取大学医学部を卒業後、湘南鎌倉総合病院にて初期研修修了。福井大学総合診療学講座後期研修プログラムに所属し、福井県高浜町の和田診療所、若狭高浜病院、福井県小浜市の小浜病院を経て京都府福知山市の市立福知山市民病院にて総合内科チーフレジデントとして研修中。

安原 大生
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