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進化する脳梗塞治療[4] 脳梗塞治療の課題とは?

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新しいデバイスが開発され、進化している脳梗塞の治療。しかし、まだ問題点も多く残されています。その問題点と解決法とは?

 

 

医師 脳梗塞の治療には、新しい方法が登場してきているもののまだまだ解決すべき問題が山積しているのが現状です。そうした問題の一つがエビデンスや時間です。

 

患者 エビデンスとは何ですか?

 

医師 治療根拠と言い換えることもできるかと思います。この治療は素晴らしいという個人的見解でなく、科学的に正当性が立証された治療ということです。

 

治療に対して高い正当性を担保するには、効果を証明したい治療方法と、比較する治療方法を恣意なく振り分け、その結果を比べるRCT(Randomised controlled trial)という研究方法が適切です。研究によって、比較対象の治療方法より新しい治療方法のほうが良いという結果が導かれると、治療根拠が与えられます。カテーテルを使って血栓を取り除く治療方法については、こうしたエビデンスがまだ脆弱な現状です。

患者 それでは、もう一つの問題、時間についてはどうですか?

 

医師 さまざまな研究結果を読み解くと、良い結果を出すには、時間が最重要と言えるくらい大切であり、それは医療現場で働く我々に改善可能な部分であると考えます。発症から病院到着までの時間短縮についての市民啓蒙、病院到着から治療開始までの時間短縮のためのスタッフとの協力などです。

 

これらは、日々の努力に改善可能な余地を多く含んでいます。北米では、時間短縮を国家プロジェクトに位置付け、どのようにしたら時間を短縮できるかという研究が行われています。こうしたことに資金を注ぐことは、寝たきりの患者さんを減らし、医療経済的にも合理性があると考えます。

 

頭の中の血管を再開通させる治療は、4番バッターのホームランに頼る治療でなく、皆でボールを繋ぎトライを決めるラグビーに似ている治療であり、治療がうまくいけば眠れる森の美女が目を覚ましてくれます。

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医師プロフィール

内田 賢一 脳神経外科

中東遠総合医療センター 脳神経外科部長
2002年福井医科大学卒業、東京警察病院、福井赤十字病院などを経て現職。
趣味はトライアスロン、登山など。神奈川県藤沢市出身。

内田 賢一
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