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現状を打破し、ステップアップするための4つのキーワード

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現状を打破できず煮え切らない思いを持ってあがいている人たちの、背中をそっと押すイベント「TOPPA」。登壇者4名から、突破のヒントをもらいました。

多様なキャリア形成が可能な現代、医療界も例外ではなくなってきています。大学病院で臨床医としてキャリアを積むだけでなく、へき地と都市部の両方での医療提供や、地域医療と国際保健活動の2拠点で活動する、NPO法人の立ち上げや起業、ITを活用したヘルスケア産業に関わるなど、各々がさまざまなキャリアを積んでいくことができます。

しかしこれは同時に、自らの力で決め、時には未知の世界へ踏み込むことをも意味しています。自らのキャリアの可能性を幅広く捉え、誰もが踏み込んだことのない世界に飛び込むことが必要なとき、少し勇気がいることでしょう。ですから、その手前で踏みとどまってしまっている方も少なくないのではないでしょうか。

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そんな人たちの背中を、そっと押すためのイベントが「TOPPA」です。「TOPPA」は、家庭医1名、整形外科医2名のグループ「メディカル・マッチョメンズ」が主催しています。煮え切らない状況を「突破」するきっかけになるように、そんな状況を「突破」してきた4名が登壇しました。

参加者は約40名。医師のみならず看護師、薬剤師、IT関連会社の社員、さらには医学生や看護学生、高校生も2名参加していました。

4名の突破口は何だったのでしょうか?

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阿部計大(あべ かずひろ)氏

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阿部さんは北里大学医学部出身の医師6年目。現在は東京大学大学院医学研究科公衆衛生学の博士課程に進まれています。同時に、医師10年目までの若手が集う日本医師会JDN(Junior Doctors Network)を設立、代表を務めています。そんな阿部さんの突破口は「選択の積み重ね」。選択によって環境が少しずつ変化し、それが突破へつながっていくと語っていました。

彼自身、母親に言われ学級委員に立候補したことで、人をまとめていくことが好きになりました。そして医学部を受験し、英語を使えて海外にも行けることから国際医学生連盟(IFMSA)に所属し、IFMSA-Japanの代表やアジア太平洋地域責任者を務めていたことにより、ニュージーランドの医学生と知り合い、それが今の日本医師会JDNの設立につながっているそうです。

「1つ1つの選択が新たな環境をつくっていくので、今、『TOPPA』に参加すると選択してこの場に来ていることで、自らの周りに新たな環境が作られました。それが突破の一歩となるのではないでしょうか」という一言で締めくくられました。

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秋本可愛(あきもと かあい)氏

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秋本さんは25歳にして、介護職を中心とした600~700名が参加しているコミュニティ「HEISEI KAIGO LEADERS」を運営しています。このコミュニティは団塊世代が後期高齢者になる2025年、介護業界を引っ張っていなければならない自分たち20代は、今どのように行動していくべきかを考え、行動に移すきっかけを与えるコミュニティです。そんなコニュミティを運営し、自らは介護職の新卒教育等も行っている彼女の突破口は、「リーダーとしての失敗」

秋本さんは専修大学商学部出身。サークル活動で持前のリーダーシップが空回りし、仲間の想いに耳を傾けることの必要性を学びました。しかし仲間の意見を聞くあまり、自分がどちらに進めばいいのか分からなくなることを経験。そこから、自らのビジョンをいかに言語化して伝えるかを考え、徹底的に自分に向き合い、介護業界、業界の人材環境、そしてリーダーシップとは何かを学んでいきました。

そうして「HEISEI KAIGO LEADERS」というコミュニティの運営を始めた時に、「想いがあることとできることは違う」ということにも新たに気づきました。皆がそれぞれ本業を持つ中で集まり運営しているコニュミティであるため、誰もがここを最優先にはできません。多様性を受け入れることを学び実践しているからこそ、約700人もの人が参加しているコミュニティを運営できていると語っていました。

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犬童一利(いぬどう かずとし)氏

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「福井県×韓国×介護」がテーマの映画「つむぐもの」の監督、犬童さん。彼は中央大学商学部を卒業後、映画とは全く関係ない企業の営業職に就きました。ところが、朝の通勤電車の“負のオーラ”に「これが日本の縮図なの!?」と大きな違和感を覚え、そんな世の中をちょっと変えたいと思い、もともと興味を持っていた映像の世界に飛び込みました。そんな犬童さんが新たな世界に飛び込めた理由として挙げていたのは「セルフモチベーションを高める」

最初の一歩が一番大変だということは間違いない。しかし明確に目標を定めることで突破できますし、目標を明確にすればするほどセルフモチベーションが高まり、目標に近づけるのではないかとのことでした。

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林伸彦(はやし のぶひこ)氏

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「ヒトの腕はなぜ再生しないのか?」という疑問を持ち東京大学で生物学を学んだ後、より人の役に立てる仕事がしたいと思い直し千葉大学医学部に編入した林さん。日本ではまだあまり聞き慣れない「胎児医療」に取り組み、NPO法人親子の未来を支える会を設立しました。そんな林さんの突破口は「人に伝える」

日本で胎児医療を普及させるためには、課題が山積しているそうです。倫理問題の議論や、制度の構築、胎児医療には切っても切り離せない関係性である出生前診断への理解の普及、障がい児のサポート体制、障がい者への社会の理解、保険の問題など――。それらを解決していくために、少しずつ社会に発信し、人に伝えていったことで仲間が集まり、活動母体であるNPO法人を立ち上げることができたそうです。取り組みは途上と語っていましたが、より大きな突破口を開けるべく、このイベントでも、現状や運営上の課題を積極的に「人に伝えて」いました。

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各講演後には、近くに座っていた方同士で感じたことなどを共有する時間が設けられていました。また、全ての講演終了後には茶話会があり、活発な交流が行われていました。

このイベントに参加し、自らの考えを話し、相手の話を聞く。煮え切らない思いを持ち現状にやきもきしているのは自分だけではないことを知り、自分の今の状況を初めて会う人たちとお互いに話し合えたことこそが、登壇者の語っていた突破口へとつながっているのではないでしょうか。

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医師プロフィール

渋谷 純輝 家庭医

2011年富山大学医学部卒業。2013年東京北社会保険病院(現・東京北医療センター)で初期研修を修了し、現在は東京で家庭医療の後期研修中。2015年10月「メディカルマッチョメンズ」を立ち上げた。明日の臨床に役立つワークショップを開催するほかに、医療界隈の人たちを繋ぐ“ハブ”を目指してさまざまなイベントを企んでいる。

渋谷 純輝
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