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INTERVIEW

医療法人社団 悠翔会 理事長

在宅医療

佐々木 淳

2000人の患者を24時間365日見守る。

厚生労働省が掲げる「地域包括ケアシステム」の構築と推進のため、在宅医療の必要性がますます高まっています。しかしながら24時間365日対応するという在宅医療のシステムは開業医が一人で行うには負担が大きく、在宅医療参入への障壁になっている現実があります。
そんな中、患者さんが「病院の世話にならない、救急車を呼ばない、入院しない」ことを目指す在宅医療の形を作り上げた人物がいます。「医療界の異端児」に見えている未来とは――。

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大規模なチーム体制で、患者さんにも医療従事者にもうれしい仕組みを

ずばり、先生がされている在宅医療の特色は何ですか?

私たちが行っている在宅医療の特色は、「大規模なチーム体制を組むことで、医師の負担を減らしながら24時間いつでもどんな病気でも対応できる」というところです。

在宅医療を行っている診療所は多くありますが、そのほとんどが、昼間は診療所で外来診療を行い、夜に在宅診療を行っています。その中で、医師が一人で診療、訪問、検査、家族との相談、リハビリの指示、事務処理、夜間や緊急の対応など、全てを担っている場合がほとんどでした。患者さんとしては、かかりつけの先生がいつも来てくれるので安心ですが、「24時間365日対応」という部分に対する医師の負担は大きく、無理がきていました。

○在宅医療を阻む3つの壁(けあサポ)
http://www.caresapo.jp/senior/life/ending/pd4fc800000067zk.html

私が目指す在宅医療の形は、「患者さんも医療従事者も幸せになる」というものです。患者さんが満足のいく形で病気や死と向き合えて、医療従事者の負担をできるだけ減らせる仕組みを作るにはどうしたら良いかを考えました。そこで、チーム体制で在宅医療を行うシステムを作り、医師一人では対応しきれない夜間対応を分担することにしたのです。

夜間は常に2名の当直制を敷いているので、緊急時の対応も可能です。患者さんの電子カルテをネット上で共有しているので、かかりつけの医師ではなくても患者さんの状況を把握し適切な治療ができるようになっています。それによって、医師は昼間の診療に専念できるようになり、患者さんは常に医療を受けられるという状態を保つことができるようになりました。

2006年に診療所を立ち上げてからだんだん賛同してくれる仲間が増えてきて、今では診療所が9カ所、常勤の医師が23名、非常勤が35名、看護師が30名、医学療法士が4名、歯科医が3名、歯科衛生士が4名、管理栄養士が2名、あんまマッサージ師が2名、ケアマネ―ジャーが3名、トータルで約150名のスタッフがいて、患者さんも約2000名いらっしゃいます。

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とても大きな規模ですね。そこまで大きくなると、運営は大変なのではないでしょうか。

もちろん大変な部分は多いですが、間違いなく言えるのは、「在宅医療の規模が大きくなると、医療従事者は負担が減り、患者さんにとっても良い」ということです。

在宅医療の規模が大きくなればなるほど、医師同士や他の医療機関同士の協力体制も敷きやすくなります。夜間の対応はもちろん、一つの在宅医療機関ではなかなか難しいこと、例えば、高額な医療機器を保有したり精神科や整形外科などの医師を常勤で雇用したり、といったこともできます。それによって、患者さんの幅広いニーズに常に応えることが可能になるのです。

ただ、大きくなるほど組織が複雑になり、患者さんとの距離が離れてしまいがちなので、患者さんにとって常に身近にアクセスできる存在でなければならないと感じています。
在宅医療では、患者さんとの信頼関係を築きながら治療をすることが必要です。そのため、コミュニケーション力も診療に際して必要な能力であると位置づけています。

○多店舗展開する診療所(日経ビジネスオンライン2013年2月21日(木))
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130219/243935/

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PROFILE

佐々木 淳

医療法人社団 悠翔会 理事長

佐々木 淳

1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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