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気軽に楽しく勉強する場を提供する

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関東の若手医師が集まり構成されている「関東若手フェデレーション‼」は、気軽に勉強できる場を提供するため、また、若手医師の横のつながりをつくるため、年3回のイベントを開催しています。今回は、楽しく勉強しようというテーマで開催された「プレゼン祭り」についてご紹介します。

今回の「プレゼン祭り」では6名が登壇。20分間のプレゼンを行い、参加者が「面白さ・勉強になったか」を10点満点で評価するというもの。プレゼンのテーマは完全自由でした。アップデートされたガイドラインの詳しい解説や禁煙治療、アンガーマネージメントからメディカル・イングリッシュのこなれた使い方まで幅広いジャンルのプレゼンがあり、時に真面目に、時に楽しく知識のインプットができる場でした。

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今回のプレゼンテーマは

◆真菌・カンジタについて僕たちが知っておきたいこと

◆こなれたmedical Englishの使い方

◆“絶対”通る!介護保険主治医意見書の書き方

◆心不全の迅速エコー診断

◆ERでのアンガーマネージメント

◆禁煙治療について

の6テーマでした。

◆真菌・カンジタについて僕たちが知っておきたいこと―森本将矢先生(聖路加国際病院)

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2015年12月に感染症ガイドラインがアップデートされたのを受けて、これだけは知っておいてほしい!ということを、症例を交えて説明してくれました。ポイントは3つ。

  1. カンジタ血症では「眼科診察」と「血液培養フォロー」「中心静脈カテーテル」を必ず行うこと
  2. 初期治療ではエキノキャンディンで開始すること(例外:eye, CNS, urinary tract)
  3. ICU settingでカンジタ血症高リスクのseptic shockの場合は抗真菌薬をエンピリックに投与する

専門外の先生や医学生には少し難しい内容のようでしたが、抑えるべきポイントが集約されていました。

◆こなれたmedical Englishの使い方-古矢裕樹先生(成田赤十字病院)

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生まれはアメリカ、10歳までアラブ首長国連邦にいた古矢先生。ご自身の経験を活かし、巧みにmedical Englishを使うポイントを3つ教えてくれました。

  1. 日本語を短く考える
  2. 能動態で文章を考える
  3. 医学英語を動詞化してみる

これらに加えて、役立つ補足も3点ありました。

  1. 命令形では、日本語は否定形がより強いが、英語は肯定形がより強い

例:日本語「動かないで!」→英語「Stay still!」

  1. 能動態を使っていいのか、受動態がいいのか迷ったときは、主語を一貫させる
  2. 相手の言っていることが分からなかったら、恐れずもう一度聞く

特に(3)はちゅうちょしがちですが、「もう一度聞いたら相手に悪いかも…」と思っているのは、自分だけ。分かっていないのに話が先に進んでしまい、後になって認識のずれが判明することのほうが相手も困ります。聞き返して怒られることはあまりないので、「気負わず聞き返す勇気を持ちましょう」とのことでした。

◆“絶対”通る!介護保険主治医意見書の書き方-藤井達也先生(山王病院)

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1次審査を問題なく通過し、2次審査の介護保険審査会で介護度をよりあげるために押さえておきたい点を、実践例を交えながら教えてくれました。

  1. 誰が書いたか

「この先生前もしっかり書いてくれていたよね」と名前を憶えてもらえる。

  1. コメント欄の充実

特に二次審査ですごく重要。例えば「独居で外階段を上がれません」など、記入欄では分からないことを記載しておくことで、機械判定後の2次審査で介護度を上げられるから。「24時間見守りが必要」「今回ADLが非常に落ちた」「再転倒の可能性が大きい」なども積極的に記載しておく。

  1. 書類内容に矛盾なし

寝たきり度・認知症度を確認したうえで、レ点項目のチェックをつけていけば矛盾のない書類になり、介護度あげられる。

◆心不全の迅速エコー診断-森川暢先生(東京城東病院 ※プレゼン時)

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心不全の診断をしたいのに、すぐにレントゲンを使えない環境にいる時は少なくないと思います。そんな時にエコーで診断できるとすごく便利というご自身の経験をもとに、エコー診断のポイントをプレゼンしてくれました。

  1. エコーを当てた瞬間白い=水が溜まっている
  2. 左右両方が白かったら心不全。片方だけが白かったら肺炎
  3. 全体像を診ることができないので、レントゲン写真をイメージしながら聴診器と同じ順番で当てる

加えて、CS1の場合は、最初に利尿薬を使用せず硝酸薬を用いることも注意点としてあげられていました。

◆ERでのアンガーマネージメント―原田拓先生(昭和大学江東東豊洲病院)

ERなどの経験が長い原田先生。急を要する救急現場で、怒りの感情を抱えたままでは力を発揮できないので、怒りをうまくコントロールするためのガス抜き方法を紹介してくれました。

  1. “怒り”を理解する

まず、怒りは二次感情であることを理解しましょう。怒りは、悲しみや苦しみ、妬みなどネガティブな一次感情から生まれるものです。そのため、自分が怒っているのは、どんなネガティブな感情が芽生えているからか、相手が怒っている背景にはどんな感情があるのかを知ることが大切です。

  1. “期待役割”を見直す

期待役割とは、自分が相手に期待していること。相手がその状態になっていないと感じることで怒りがわいてくるのですが、その「期待」は相手にとって適切な期待なのかを、自分の中で考え直してみることが必要ということでした。「なんであの人はこんなこともできないのか」などの、対人関係によるストレスへの対処に活用できるそうです。

◆禁煙治療について―平塚祐介先生(昭和大学病院)

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1.86倍。

これは禁煙外来以外の場面で、「最近、禁煙できていますか?」など医師の簡単なカウンセリングで上げられる禁煙成功率です。禁煙外来だけでは、3割の患者さんが再び喫煙してしまいます。ですが、禁煙外来と直接的に関係のない医師からのサポートも十分効果があるという事実が、平塚先生からは伝えられました。

◆◆◆

今回のプレゼン評価の投票では、「“絶対”通る!介護保険主治医意見書の書き方」の藤井達也先生が第一位に輝きました。内容のポイントが具体的かつ分かりやすく、さらにプレゼン資料であるパワーポイントが群を抜いて見やすかったからではないでしょうか。

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また、プレゼンの合間には、会場に貼ってあった画像から診断クイズがありました。参加者は休憩時間を使って、回答していました。このクイズからは、「気づかぬ症状が隠れているかもしれないので、撮った画像は隅々まで診る!」というメッセージを伝えられました。

関東若手フェデレーションの「プレゼン祭り」では、専門性の高い医学的知識から、診療技術とは離れた分野でも日々の仕事に生かせる知恵まで幅広く学べます。また、雰囲気も堅苦しくなく、時にユーモアもありました。決してものすごく意識が高くなくてもちょっと勉強会来てみようかなという方にも気軽に来てほしいという主催者側の思いがあります。さまざまなパターンで年に3回開かれていますので、気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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医師プロフィール

原田 拓 総合内科

昭和大学江東豊洲病院総合内科。2009年昭和大学を卒業し、自治医学附属病院で初期研修を修了。昭和大学病院で1年間内科後期研修を行い、2012年に昭和大学病院総合診療部に入局し、勉強会やジャーナルクラブの立ち上げを行っている。2015年より現職および家庭医療の後期研修中。同年に東京城東病院総合内科森川暢先生のもとで関東若手医師フェデレーションを設立し代表となる。

原田 拓

藤井 達也  整形外科

医療法人社団翠明会山王病院整形外科。2010年千葉大学を卒業し、総合病院国保旭中央病院で初期研修を終了。千葉大学医学部付属病院から整形外科後期研修を始め、習志野第一病院、成田赤十字病院などを経て2015年より現職。同年関東若手医師フェデレーションにスタッフ参加、2016年7月より獨協医科大学病院総合診療科の原田 拓先生と共同代表を務める。

藤井 達也 
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