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認知症カフェと復職支援リワークカフェ、2つのカフェがもたらす好循環

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近年、多くの医療者が地域住民と共に街の健康づくりを模索する場、医療知識を勉強できる場としてカフェの運営を行っています。山形県酒田市の山容病院でも、認知症の方と家族のための認知症カフェ「グリーンカフェ」や、企業向けに復職支援情報交換会として「リワークカフェ」の運営を始めています。そのことにより、病院スタッフにも変化が生まれているそうです。

山容病院で2つのカフェが始まりました。認知症の患者とその家族向けの「認知症カフェ」、そして企業向けの復職支援情報交換会、通称「リワークカフェ」です。認知症カフェは過去2回、リワークカフェは過去1回実施し、いずれも9月に再び行うため、現在準備を進めています。

カフェを運営することで職員の主体性が磨かれ、地域に開かれた病院の実現に近づき、それがまた職員の主体性を刺激するという好循環が生まれています。

◆認知症カフェ

当院の認知症カフェでは医学的知識の勉強会ではなく、皆で何かに取り組むことをメインテーマとしています。勉強会や医学的なことの相談会という印象を付けてしまうと、「そこに行くだけの知識レベルが自分にあるだろうか」と気が引けてしまう方もいらっしゃいますし、敷居が高くなってしまうからです。初回は認知症の母親を介護した経験を各地で話されている方にお願いしました。2回目はアロマセラピスト、次回の3回目は音楽家を予定しています。

このカフェでは運営スタッフである職員が認知症患者の家族であったり、患者がかつての職員であったり、運営スタッフ/参加者、あるいは職員/患者/家族が縦に区切られた関係ではなく、良い具合に混ざり合っています。そして肩書を越えて普段とは違った交流が生まれているのです。

行政と連携して行われている認知症カフェも多くあるかと思いますが、当院では職員のボランティアで行われているので主体性が刺激されています。認知症病棟スタッフだけでなく、徐々に他部署のスタッフも運営に加わり地域住民とのつながりをつくっており、「地域に開かれた病院」実現の大きな役割を担っています。

◆リワークカフェ

6月に第1回を開催した際、小学校や福祉施設を含めその他企業約80件に案内状を送り、12名の方に参加していただきました。そして事例紹介と、どのように当院が対応しているかをお話しさせていただきました。第1回目を受けて、すでに数件相談が寄せられています。

9月には第2回目の開催を予定しており、現在160件の案内状を送る準備を進めています。案内状の送り先は、理事長兼院長である私が名刺交換した方々も多いですが、こちらのカフェも職員主導で運営しているため、職員自身が地元企業や組織とのネットワークを構築し、参加者増加を試みています。

リワークカフェを始めるきっかけとなったのは、復職支援のうつ病リワークプログラムを始めたことです。当院では2016年1月にプログラムをスタートさせ、平均で定員の7割が埋まっている状態で推移していますが、リワークプログラムは採算が難しいという話も聞かれます。しかし、病院側から企業側に対してリワークカフェの案内を積極的に行うことで、興味を示してくれる企業は確実に増え、相談や治療介入へとつながります。働きかけの効果が出ることで、職員たちのモチベーションがさらに上がっていきます。

認知症カフェはボランティア、リワークカフェは業務と好対照なこの両者は、これから病院の財産となるでしょう。いずれもスタートしたばかりではありますが、地域の方々とのネットワークが構築できており、「地域に開かれた病院」の実現に近づいています。そして職員主導で動き、地域住民からの病院の評価が変化していることが、職員がより一層主体的に動くモチベーションとなっています。これが病院をさらにオープンにするという好循環が生まれています。この循環の中で患者数が増え、病院が地域の課題解決に貢献するという枠組みを目指しています。

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医師プロフィール

小林 和人 精神科

医療法人山容会理事長 東京大学医学部卒業。同大学付属病院にて研修後、福島県郡山市の針生ヶ丘病院に就職。平成20年に山容病院に就職。平成23年同病院院長に就任、平成26年より現職

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