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胃がんとピロリ菌の深い関係

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ピロリ菌に感染していない人は、ほぼ胃がんにはなりません。まずはピロリ菌がいるかどうかの検査をして、感染している方だけが胃の精密検査を受けるようにするべきです。

胃がんは減少傾向にあるとはいえ、まだまだ日本では多くの人がなるがんです。年間約12万5000人の方が発症し、約5万人の方が胃がんによって命をおとしています。

胃がんはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染によって起こることがわかってきました。ピロリ菌が幼少期に胃粘膜に感染すると、長い年月をかけて粘膜に炎症が起こり、徐々に萎縮してきます。そして年間1000人中3~4人くらいの方にがんが発生するのです。ピロリ菌陰性のがんも存在するのですが、頻度的には極めて稀で、ほとんどの胃がんはピロリ菌が感染した粘膜に発生します。

逆に言うと、ピロリ菌に感染していない人はほぼ胃がんにはならないということです。若い世代ほどピロリ菌の感染は減っており、50才以下の感染率は20%以下です。多くの方は胃がん検診を受ける必要はありません。現在住民検診は40才以上、会社の検診では30才以上の方が毎年バリウム検診を受けることになりますが、ピロリ菌陰性の方が毎年バリウム検診を受ける意味はありません。ほぼ胃がんにはならないのに毎年放射線を被ばくする検査を受けることは無意味です。まずピロリ菌がいるかどうかの検査をして、感染している方だけが胃の精密検査を受けるようにするべきです。精密検査は胃の内視鏡検査になりますが、今は鼻から挿入する細いスコープも一般化し、非常に楽に受けることができます。

私の住む藤沢市では平成26年度からピロリ菌検診(ABC検診)が始まりました。まず採血検査でピロリ菌がいるかどうかを調べ、感染している方だけが保険診療で内視鏡検査を受けていただきます。広くバリウム検診を行うより、無意味な検査を減らすことが可能で、より効率良く治る段階のがん(早期がん)を発見できるのです。

住民検診や会社検診でピロリ菌検査を受けられない方は、ぜひ自費でピロリ菌検査を受けてください。そして陽性と判定された場合は内視鏡検査を受けて、ピロリ菌の除菌治療を行いましょう。早い時期に除菌すれば将来胃がんになる危険性を減らすことができます。

それではピロリ菌陰性の人は内視鏡検査を受けなくても大丈夫かというと、そうでもありません。食道と胃の境目にできる噴門部がんは逆流性食道炎との関係があるといわれ、今後増えてくるかもしれません。また50才以上で飲酒、喫煙をされる方は食道がんのリスクも高くなります。ピロリ菌陰性でも50才以上になったら、少なくとも5年に1回くらいは内視鏡検査を受けるようにしてください。

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医師プロフィール

菅 誠(すが まこと) 消化器内科

1985年 横浜市立大学医学部卒業
1985~1994年 研修後、横浜市立大学医学部第二内科に入局
大学付属病院・関連病院に勤務
1994~2002年 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院消化器内科勤務
内視鏡室所属となり、消化器内視鏡の診断・治療、ピロリ菌の研究に携わる
2002年 藤沢市湘南台に「すが内科クリニック」開業 現在に至る
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医

菅 誠(すが まこと)
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